後継者不足に効く対策8選と現状把握|外部人材の招き方から相談先まで解説

2026.10.29 2026.10.29
後継者不足に効く対策8選と現状把握|外部人材の招き方から相談先まで解説

INTRODUCTION

  • 「後継者がいないまま60代を迎えてしまった」
  • 「子どもに継ぐ気がなく、社内にも任せられる人がいない」

こうした悩みを抱える経営者は少なくありません。帝国データバンクが2025年11月に公表した調査でも、全国の企業の約半数で後継者が決まっていない状況が続いています。
[参照元]全国「後継者不在率」動向調査(2025年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]

後継者不足の対策は、親族内承継・従業員承継・M&Aだけではありません。近年は、社外から経営人材を招く「外部招聘」で承継する企業が増えています。承継の前に財務や法務の体制を整えて「継げる会社」にしておくことも、後継者探しを進めやすくする有効な手立てです。

この記事では、後継者不足の現状と原因を最新データで確認したうえで、対策8選と、外部から後継者を招くときの実務、相談先の使い分けまでを解説します。

この記事の要点

  • 後継者不足の対策は「親族内・社内・外部招聘・M&A」の4ルートと、それを支える体制づくりに分けて考える
  • 外部招聘は増えている選択肢で、役員として段階的に迎え、株式・保証・報酬の条件を先に整理すると進めやすい
  • 承継の準備には3年以上かかるケースが多いため、早い段階で専門家と人材の相談先を確保しておく

後継者不足の対策は「誰に継ぐか」と「いつ動くか」で決まる

後継者不足の対策を考えるときは、まず「誰に会社を継ぐのか」というルートを決め、次に「いつまでに何をするか」という時間軸を引きます。

ここでは記事全体の結論として、4つのルートと8つの対策、そして自社に合った対策を選ぶ順番の考え方を先にまとめます。

対策は親族内・社内・外部招聘・M&Aの4ルートに分かれる

中小企業庁は、事業承継を引き継ぐ先によって「親族内承継」「従業員承継」「M&A(社外への引継ぎ)」の3つに分類しています。社外から経営者を迎える「外部招聘」は、この分類ではM&Aと同じ「社外への引継ぎ」に含まれています。
[参照元]事業承継を知る | 中小企業庁

ただし、外部招聘とM&Aでは、経営者が実際に取り組む内容が大きく異なります。M&Aは会社や事業を他社に譲り渡す取引なので、仲介会社や買い手との交渉が中心になります。

一方の外部招聘は、会社の持ち主を変えずに経営を任せる人を採用することなので、人材探しや処遇の設計が中心です。そこでこの記事では、外部招聘を独立したルートとして扱い、次の4つに分けて整理します。

  1. 親族内承継:子どもや兄弟、甥・姪などの親族に、経営と株式を引き継ぐ方法です。
  2. 社内承継(従業員承継):役員や従業員を後継者に選ぶ方法で、内部昇格や、経営陣が株式を買い取るMBO(マネジメント・バイアウト)が含まれます。
  3. 外部招聘:社外から経営経験のある人材を迎え、役員として経験を積んでもらったうえで社長を任せる方法です。
  4. M&A(第三者承継):株式譲渡や事業譲渡によって、会社や事業そのものを他社や個人に引き継ぐ方法です。

どのルートを選んだとしても、株式や事業用資産の引き継ぎ、経営者保証の整理、後継者を支える社内体制づくりは避けて通れません。後継者不足の対策は「ルートの選択」と「承継を支える体制づくり」の2本立てで考えると、やるべきことが見えやすくなります。

対策8選の全体像を一覧表で比べる

この記事で紹介する8つの対策を、内容と向いているケース、主な相談先で比べると次のとおりです。それぞれの進め方は後半の「後継者不足の対策8選と進め方を知る」で詳しく解説します。

対策 主な内容 向いているケース 主な相談先
1. 親族内承継の意思を早めに確かめる 子どもや親族の意思確認と育成計画づくり 親族に後継者候補がいる 税理士、事業承継・引継ぎ支援センター
2. 社内の役員・従業員を後継者として育てる 幹部候補の選抜と、経営判断を経験させる配置 社内に信頼できる幹部がいる 中小企業診断士、金融機関
3. 外部から経営人材を招く 経営経験者を役員として採用し、段階的に引き継ぐ 親族にも社内にも候補がいないが、会社は残したい 人材紹介会社、後継者人材バンク
4. 管理部門を整えて「継げる会社」にする 経理・財務・法務の担当者や責任者を確保する 数字や契約の管理を経営者が一人で抱えている 人材紹介会社、税理士
5. 社外取締役・顧問を伴走役に置く 外部の経営経験者が後継者の意思決定を支える 後継者の経営経験が浅い 社外役員のマッチングサービス
6. 公的な支援機関を使う 承継計画の策定支援や後継者人材バンクの活用 何から手をつけるべきか決まっていない 事業承継・引継ぎ支援センター
7. M&Aで第三者に引き継ぐ 株式譲渡や事業譲渡による承継 会社の形にこだわらず、事業と雇用を残したい M&A支援機関、事業承継・引継ぎ支援センター
8. 廃業も含めて選択肢を比べる 経営資源の引き継ぎも含めた出口の比較 事業の継続が難しい、または当代限りと決めている 税理士、弁護士、金融機関

対策1〜3と7は「誰に継ぐか」を決めるルートの選択で、対策4と5はどのルートでも効く体制づくりにあたります。

対策6と8は、判断に迷ったときや選択肢を比べるときの土台です。実際には1つの対策だけで完結することは少なく、ルートの選択と体制づくりを組み合わせて進める企業がほとんどです。

経営者の年齢と後継者候補の有無で選ぶ順番が変わる

後継者不足の対策で最も大切なのは、着手するタイミングです。

中小企業庁の資料では、後継者を決めてから事業承継が完了するまでの移行期間(後継者の育成期間を含む)について、3年以上かかる割合が半数を超えるとされています。同じ資料では、多くの経営者がまず親族内承継を検討し、次に従業員承継、その後にM&Aを検討する順番をとる傾向も示されています。
[参照元]親族内承継に関する現状分析と今後の検討の方向性について(中小企業庁)

順番に検討すること自体は自然ですが、1つのルートを試してから次へ進むやり方では、気づいたときに時間が足りなくなりがちです。

帝国データバンクの調査では、前年に後継者候補がいたのに翌年には不在に戻った「計画中止・取りやめ」の割合が、60代で2.3%、70代で3.3%、80代以上で4.7%と、経営者の年齢が上がるほど高くなっていました。
[参照元]全国「後継者不在率」動向調査(2025年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]

こうしたデータを踏まえると、後継者候補の状況別に、次の順番で検討するのが現実的です。

  • 親族に候補がいて本人も前向きな場合は、対策1を軸に、育成計画と株式の引き継ぎ方を早めに固めます
  • 親族に候補はいないが社内に幹部がいる場合は、対策2を軸にして、株式の取得資金と経営者保証の扱いを金融機関や税理士に早めに相談します
  • 親族にも社内にも候補がいないが会社は残したい場合は、対策3と対策6を並行して進めます
  • 会社の形にこだわらず、事業と従業員の雇用を残すことを優先したい場合は、対策7を検討します
  • どのルートを選ぶ場合でも、対策4と対策5は並行して進めておくと、承継後の経営が安定しやすくなります

経営者の年齢でいえば、50代のうちに後継者候補の棚卸しと会社の数字の見える化を済ませ、60代でルートを決めて候補者の育成に入るのが一つの目安です。

すでに70代以上で後継者が決まっていない場合は、1つのルートに絞らず、複数のルートを同時に検討することをおすすめします。

後継者不足の現状は2つの調査で見え方が異なる

後継者不足の現状を示すデータとしてよく引用されるのが、帝国データバンクと東京商工リサーチの調査です。

ただ、2つの調査は後継者不在率の水準も、改善しているか悪化しているかという傾向も異なります。ここでは両方の数字と違いの理由、そして承継の形がどう変わってきているかを確認します。

帝国データバンクの調査では不在率が50.1%まで改善している

帝国データバンクが2025年11月に公表した調査によると、約27万社のうち後継者が「いない」または「未定」の企業は13.8万社で、後継者不在率は50.1%でした。前年から2.0ポイント低下し、7年連続で改善しています。

過去10年で最も高かった2017年と比べると、16.4ポイント低い水準です。

帝国データバンクは改善の理由として、事業承継・引継ぎ支援センターや地域金融機関、M&A仲介会社などの相談窓口が広がり、これまで支援が届きにくかった小規模事業者にも門戸が開かれたことを挙げています。

一方で、企業の規模による差は大きく残っています。同じ調査で規模別にみると、大企業の後継者不在率が24.9%だったのに対し、中小企業は51.2%、小規模企業は57.3%でした。会社の規模が小さいほど後継者対策が進んでいないことがわかります。

また、帝国データバンクは、事業を「続ける」企業と「畳む」企業に二分される形で、後継者不在率は今後も50%前後で推移するとの見通しを示しています。改善傾向とはいえ、2社に1社は後継者が決まっていない状況が当面続くと考えておいたほうがよいでしょう。

東京商工リサーチの調査では62.60%と上昇が続いている

東京商工リサーチの2025年の調査では、後継者不在率は62.60%でした。前年の62.15%から0.45ポイント上昇しており、調査を始めた2019年の55.61%から毎年上がり続けています。

後継者不在率

代表者の年齢別にみると、60代の企業で49.10%、70代で32.01%、80代以上でも24.97%が後継者不在でした。80代以上は前年から1.01ポイント上昇しています。

東京商工リサーチは、円滑な承継には時間がかかることから、高齢の代表者が経営する後継者不在企業の一定数は、廃業などで市場から退出せざるを得ない状況だと指摘しています。

後継者が決まっていない理由をみると、「設立・交代して浅い又は若年者にて未定」が47.75%で最も多く、「未定・検討中」が46.60%で僅差で続きました。事業承継の方針がはっきりしない、計画が立てられない企業が依然として多いことがうかがえます。

[参照元]「後継者不在」年々上昇し62.60%に 代表者が高齢の企業ほど、上昇が顕著 | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ

調査対象と集計方法が違うため数字の読み方に注意が要る

2つの調査で数字が大きく異なるのは、調べている企業の範囲と期間が違うためです。帝国データバンクは、2023年10月から2025年10月までの情報をもとに、事業承継の実態を分析できる約27万社を対象にしています。

東京商工リサーチは、約400万社の企業データベースのうち、2023年以降の後継者に関する情報が蓄積されている16万9,136社を抽出して分析しています。そのため、どちらが正しいかではなく、別々の物差しで測った数字として読むのが適切です。

両方の調査に共通しているのは、「少なくとも半数前後の企業で後継者が決まっていない」という点です。

さらに、中小企業だけを対象にした日本政策金融公庫総合研究所の2023年の調査では、後継者が決まっていて本人も承諾している「決定企業」は10.5%にとどまり、自分の代で事業をやめるつもりの「廃業予定企業」が57.4%を占めました。

規模の小さい企業まで含めると、後継者の確保はさらに難しい課題になっています。

自社の状況を考えるときは、全国平均の数字よりも、同じ規模・業種・地域の企業の傾向や、自社の経営者の年齢と照らし合わせて判断することが大切です。

承継の形は「同族」から「内部昇格・外部招聘」へ移りつつある

後継者不足の対策を考えるうえで注目したいのが、実際に誰が後継者になっているかという変化です。

帝国データバンクの調査では、2025年に代表者が交代した企業の就任経緯(速報値)は、役員や社員を登用する「内部昇格」が36.1%となり、これまで最も多かった「同族承継」の32.3%を上回りました。

買収や出向を中心とする「M&Aほか」は20.6%、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」は7.6%です。後継者候補の属性でも、親族以外の「非同族」が41.0%で初めて40%を超えました。

帝国データバンクは、副業・兼業の広がりや、セカンドキャリアとして事業承継を選ぶ人の増加によって、経営人材を獲得するハードルが下がったことも改善の要因に挙げています。

東京商工リサーチの調査でも、後継者が決まっている企業の内訳は「同族継承」が63.65%で最多だったものの、社外の人材に承継する「外部招聘」が19.67%と前年から1.04ポイント増え、従業員に承継する「内部昇進」の16.23%を上回りました。

2つの調査は分類の定義が異なるため数字をそのまま比べることはできませんが、「親族に継ぐのが当たり前」という前提が崩れ、社内外の人材に経営を託す企業が増えている点では一致しています。

親族に後継者候補がいないことは、もはや承継をあきらめる理由にはならないといえます。

業種・地域・代表者の年齢で深刻さが大きく違う

後継者不足の深刻さは、業種や地域によっても大きく異なります。

帝国データバンクの調査では、業種別の不在率が最も高いのは建設業の57.3%で、最も低いのは製造業の42.4%でした。都道府県別では、最も低い三重県が33.9%、最も高い秋田県が73.7%と、40ポイント近い差があります。

帝国データバンクは、不在率が高い地域では同族経営の企業が多く、親族以外に経営権を移すことへの抵抗感が根強いことや、後継者候補となる若い世代が都市部へ流出していることを背景に挙げています。

東京商工リサーチの調査では、産業別で最も不在率が高いのは情報通信業の77.06%でした。業種をさらに細かくみると、インターネット附随サービス業が88.20%で最も高く、士業や経営コンサルなどの専門サービス業も上位に入っています。

代表者の目利きや職業スキルが稼ぐ力に直結する業種ほど、後継者を見つけにくい傾向があるとみられます。都道府県別では神奈川県の76.00%、東京都の72.24%が高く、帝国データバンクの調査とは異なる傾向が出ています。
[参照元]「後継者不在」年々上昇し62.60%に 代表者が高齢の企業ほど、上昇が顕著 | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ

このように、業種や地域の傾向は調査によって結果が分かれます。全国の傾向はあくまで参考にとどめ、自社の業種で経営者に求められるスキルや、地域で採用できる人材の層を踏まえて、どのルートが現実的かを考えることが大切です。

後継者不足が起きる5つの原因を押さえる

後継者不足は「少子高齢化だから仕方がない」と片づけられがちですが、実際にはいくつかの原因が重なって起きています。

原因がわかれば、自社でどこから手をつけるべきかも見えてきます。ここでは、公的な調査で確認できる5つの原因を整理します。

親族が継がない・継がせたくないケースが増えている

1つ目の原因は、親族内承継が以前ほど当たり前ではなくなったことです。日本政策金融公庫総合研究所の2023年の調査では、廃業を予定している企業に理由を尋ねたところ、「子どもがいない」「子どもに継ぐ意思がない」「適当な後継者が見つからない」を合わせた後継者難による廃業が28.4%ありました。
[参照元]中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)|日本政策金融公庫総合研究所

帝国データバンクの調査でも、後継者候補の属性で「子ども」は29.7%、「配偶者」は4.7%と、いずれも前年から低下しています。
[参照元]全国「後継者不在率」動向調査(2025年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]

背景には、子どもが別の会社で安定したキャリアを築いているケースや、経営者自身が借入金や経営の苦労を子どもに背負わせたくないと考えるケースがあります。

親族内承継を望む場合でも、本人の意思を確かめないまま「いずれ継いでくれるだろう」と先送りにすると、他のルートを検討する時間がなくなってしまいます。

社内に経営を任せられる人材が育っていない

2つ目の原因は、社内に後継者候補がいても、経営を任せられる段階まで育っていないことです。現場の仕事に精通していることと、資金繰りや投資、人事などの経営判断ができることは同じではありません。

帝国データバンクの調査では、2025年に新たに代表者に就任した人のうち、業界経験が10年以上ある人が83.9%を占めた一方で、経営経験が3年未満の人が69.6%で最も多くなっていました。業界に詳しいベテラン社員や役員が、経営の経験は浅いまま社長に就くケースが多いことがわかります。
[参照元]全国「後継者不在率」動向調査(2025年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]

東京商工リサーチは、従業員に承継する「内部昇進」が16.23%と伸び悩んでいることについて、社内業務に精通し、従業員や取引先から信頼を得た従業員の登用がなぜ進まないのかを見つめ直す必要があると指摘しています。
[参照元]「後継者不在」年々上昇し62.60%に 代表者が高齢の企業ほど、上昇が顕著 | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ

経営者がすべての判断を一人で担ってきた会社では、幹部が経営判断を経験する機会がそもそもありません。後継者候補を育てるには、早い段階から予算や採用などの判断を任せる配置が必要です。

株式の取得資金や経営者保証が後継者の重荷になる

3つ目の原因は、お金の問題です。中小企業では、経営者が会社の株式の大半を持ち、会社の借入金に個人保証(経営者保証)をつけていることが一般的です。後継者が経営を引き継ぐには、株式を買い取る資金を用意し、借入金の保証も引き継ぐ必要が出てくる場合があります。

中小企業庁は、事業承継時に経営者保証が後継者候補を確保するうえでの障害になっていることを踏まえ、金融機関と中小企業の双方の取り組みを促す対策を進めています。
[参照元]事業承継の支援策 | 中小企業庁

帝国データバンクも、事業承継の局面では後継者が株式や事業用資産を買い取る場合が多く、資金調達を含めた金融機関の役割が大きいと指摘しています。

従業員や外部の人材にとって、多額の資金が必要になる株式の取得や、個人保証の引き受けは大きな決断です。「経営は任せたいが、株式と保証はどうするか」を決めないまま打診すると、候補者に断られる原因になります。

経営が属人化していて引き継げる形になっていない

4つ目の原因は、経営が経営者個人の能力や人脈に頼りきっていることです。日本政策金融公庫総合研究所の2023年の調査では、廃業を予定している企業の45.2%が、廃業理由として「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」と答えていました。

その理由として多かったのは、「経営者個人の感性・個性が欠かせない事業だから」(24.4%)、「経営者個人の人脈が欠かせない事業だから」(16.6%)といった、経営者の属人的な資源に関するものです。

取引先との関係や価格の決め方、資金繰りの判断が経営者の頭の中にしかない会社は、後継者候補から見ても「引き継げる気がしない」会社に映ります。

会社の数字や契約、業務の手順を誰でも把握できる形に整えておくことは、どのルートで承継する場合にも欠かせない準備です。

準備に着手するタイミングが遅れやすい

5つ目の原因は、準備の遅れです。日々の経営に追われていると、事業承継は急ぎの課題に見えにくく、後回しにされがちです。前述のとおり、後継者を決めてから承継が完了するまでには3年以上かかるケースが半数を超えます。

ところが、東京商工リサーチの調査では、後継者が決まっていない理由として「未定・検討中」が46.60%を占めていました。方針が決まらないまま時間が過ぎ、経営者が高齢になってから慌てて動き出すと、帝国データバンクの調査が示すように計画の中止・取りやめのリスクも高まります。

後継者不足の対策は、後継者が見つかってから始めるものではありません。後継者を探す段階から、会社の見える化や体制づくりを同時に進めることで、承継までの時間を短くできます。

後継者不足への対策8選と進め方

ここからは、冒頭の一覧表で紹介した8つの対策を、具体的な進め方とあわせて解説します。

対策1〜3と7は承継のルート、対策4と5は承継を支える体制づくり、対策6と8は判断の土台になる対策です。自社の状況に近いものから読み進めてください。

対策1:親族内承継の意思を早めに確かめる

親族に後継者候補がいる場合は、まず本人の意思をはっきり確かめることから始めます。「いずれ継いでくれるだろう」と期待したまま話し合いを先送りにすると、本人が別のキャリアを固めてしまい、他のルートを検討する時間もなくなります。

話し合いの際は、売上や利益だけでなく、借入金の額や経営者保証の有無など、会社の実情も隠さずに伝えることが大切です。中小企業庁の資料では、すでに親族内承継をした後継者が承継を決めた理由として、「廃業させたくなかった」「ほかに継ぐ人がいなかった」といった理由が多く挙がっています。前向きな動機だけで決まるとは限らないからこそ、判断材料をそろえてから話し合いましょう。
[参照元]親族内承継に関する現状分析と今後の検討の方向性について(中小企業庁)

承継が決まったら、育成計画と株式の引き継ぎ方を同時に検討します。

後継者の育成では、社内でさまざまな部門を経験させるほか、中小企業庁が支援策として紹介している経営後継者研修のような外部の研修を活用する方法もあります。株式の贈与や相続にかかる税金は、後述する事業承継税制で負担を抑えられる場合があるため、早めに税理士へ相談しておくと安心です。

対策2:社内の役員・従業員を後継者として育てる

親族に後継者候補がいない場合、次に検討したいのが社内の役員や従業員への承継です。社内の事情や取引先との関係をよく知る人材なので、従業員や取引先の理解も得やすいという利点があります。

一方で、社内の幹部は現場の仕事には精通していても、経営判断の経験は不足しがちです。帝国データバンクの調査でも、2025年に新たに代表者に就任した人のうち、経営経験が3年未満の人が69.6%を占めていました。後継者候補を決めたら、予算づくりや採用、金融機関との交渉などを少しずつ任せ、在任中に経営判断を経験させておくことが大切です。

社内承継で壁になりやすいのが、株式の取得資金と経営者保証です。後継者が個人で株式を買い取るのが難しい場合は、ファンドを活用して経営陣が株式を取得するMBOという方法もあります。中小企業庁も、ファンドを活用したMBOを含む事業承継を支援策の一つとして紹介しています。

株式と保証の扱いは後継者候補にとって大きな判断材料になるため、本人に打診する前に、金融機関や税理士と方針を相談しておきましょう。

対策3:外部から経営人材を招く

親族にも社内にも後継者候補がいないものの、会社は自分たちの手で残したいという場合に検討したいのが、外部から経営人材を招く方法です。

M&Aのように会社を売却するのではなく、株式は現在のオーナーや親族が持ったまま、経営を任せる人を採用するという選択肢になります。

東京商工リサーチの調査では、後継者が決まっている企業のうち「外部招聘」が19.67%で、前年から1.04ポイント増えていました。帝国データバンクも、副業・兼業の広がりや、セカンドキャリアとして事業承継を選ぶ人の増加によって、経営人材を獲得するハードルが下がったと指摘しています。


外部招聘は、求める人物像の決め方や採用の経路、株式・報酬の条件など、検討すべきことが多いルートです。具体的な進め方は、後半の「外部から後継者を招くときの実務を押さえる」で詳しく解説します。

対策4:管理部門を整えて「継げる会社」にする

どのルートで承継する場合でも効果が大きいのが、経理・財務や法務などの管理部門を整えておくことです。会社の数字や契約を経営者が一人で抱えている状態では、後継者候補から見て「引き継げる気がしない」会社に映ってしまいます。

月次の決算や資金繰りの管理、金融機関への報告、契約書の管理などを担当者が回せる体制になっていれば、後継者は経営判断に集中できます。

M&Aを選ぶ場合でも、財務や契約が整理された会社のほうが買い手に状況を伝えやすく、交渉を進めやすくなります。管理部門の具体的な整え方は、後半の「承継を支える管理部門と社外役員を整える」で解説します。

対策5:社外取締役・顧問を後継者の伴走役に置く

後継者が経営経験の浅いまま社長に就く場合は、社外の経営経験者を取締役や顧問として迎え、後継者の意思決定を支えてもらう方法があります。

先代の経営者が会長として残る場合、後継者は先代の意向と自分の考えの間で板挟みになりがちです。社外取締役や顧問は、先代とも後継者とも利害関係のない立場から助言できるため、両者の調整役としても機能します。

後継者の育成期間に限って顧問契約を結ぶなど、会社の規模に合わせた形で迎えることも可能です。社外取締役と顧問の違いについては、次の記事も参考にしてください。

関連記事:経営顧問とは?役割・報酬相場と社外取締役との違いを解説

対策6:事業承継・引継ぎ支援センターと後継者人材バンクを使う

何から手をつければよいかわからない場合は、まず公的な相談窓口を使うのがおすすめです。

事業承継・引継ぎ支援センターは全国47都道府県に設置されており、事業承継全般の相談対応や事業承継計画の策定、M&Aのマッチング支援などを原則無料で行っています。親族内承継からM&Aまで、ルートを決める前の段階から相談できます。

[参照元]事業承継の支援策 | 中小企業庁

センターでは「後継者人材バンク」という事業も行っています。後継者がいない小規模事業者と、創業を目指す個人起業家をマッチングし、店舗や設備などの経営資源を引き継いでもらう仕組みです。

ただし、後継者人材バンクは経営者候補として起業家を引き合わせるもので、従業員としての雇用をあっせんするものではありません。自社の役員として経営人材を採用したい場合は、人材紹介会社など別の経路と組み合わせて検討しましょう。

事業承継・引き継ぎポータル

[参照元]事業承継・引継ぎポータル

対策7:M&Aで第三者に事業を引き継ぐ

親族にも社内にも後継者がおらず、会社の形にこだわらずに事業と従業員の雇用を残したい場合は、M&Aが有力な選択肢になります。

中小企業庁によると、M&Aを実施した企業のうち82.1%で、M&A後も従業員の雇用が完全に維持されていました。2022年度の中小M&Aの実施件数は、事業承継・引継ぎ支援センターを通じたものが1,681件、民間のM&A支援機関を通じたものが4,036件と、利用は広がっています。

一方で、相手選びには注意が必要です。帝国データバンクは、2024年に悪質な買い手企業によるトラブルが相次いで表面化し、約束どおりに経営者保証の解除や債務の引き受けに応じないケースもあったと指摘しています。

M&A仲介会社を選ぶときは、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録された機関かどうかを確認し、契約内容に経営者保証の扱いを明記してもらうことが大切です。

対策8:廃業も含めて選択肢を早めに比べておく

あらゆる対策を検討しても後継者が見つからない場合や、経営者自身が当代限りと決めている場合は、廃業も選択肢の一つです。

ただし、廃業は「何もしなければ自然にたどり着く結果」ではなく、準備が必要な出口だと考えておきましょう。

中小企業庁の資料によると、休廃業・解散した企業のうち、黒字のまま休廃業・解散した企業の割合は引き続き50%以上となっています。黒字の事業であれば、会社全体は引き継げなくても、一部の事業や設備、取引先、従業員を他社に引き継いでもらえる可能性があります。

中小企業庁も、廃業する場合に経営資源の引き継ぎを行うケースを、事業承継と並ぶ考え方として整理しています。
[参照元]親族内承継に関する現状分析と今後の検討の方向性について(中小企業庁)

廃業を選ぶ場合も、従業員の再就職先や取引先への影響を考えると、数年単位の準備期間が必要です。

承継と廃業のどちらを選ぶにしても、早い段階で両方の選択肢を比べておくことが、後悔しない判断につながります。

外部から後継者を招くときの実務を押さえる

外部招聘は、親族にも社内にも後継者候補がいない会社にとって、会社を手放さずに経営を引き継ぐための選択肢です。

ただし、採用した人に社長を任せるまでには、人物像の設計から処遇の条件、社内への説明まで、検討すべきことが多くあります。ここでは、外部から後継者を招くときの進め方を順番に解説します。

外部招聘が向いている会社と向かない会社がある

外部招聘が向いているのは、次のような会社です。

  • 業績が安定していて、経営を引き継ぐだけの価値と将来性がある
  • オーナーや親族が株式を持ち続けることに抵抗がない、または株式を段階的に移す余地がある
  • 経営者がいなくても日常の業務が回る程度に、組織と仕組みが整っている

反対に、業績が悪化していて借入金の返済が重い場合や、経営者が権限を手放す覚悟を決められていない場合は、外部から人材を迎えても定着しにくくなります。外部の人材にとって、権限が与えられないまま責任だけを負う立場は魅力がないためです。

まずは、経営を任せる範囲と、自分が退くタイミングを経営者自身が決めておくことが出発点になります。

求める人物像を自社の経営課題から逆算して決める

外部から後継者を招くときにありがちな失敗が、「同業界での経験が豊富な人」という条件だけで探してしまうことです。

帝国データバンクの調査では、2025年に新たに代表者に就任した人のうち、業界経験が10年以上ある人は83.9%でしたが、経営経験が3年未満の人も69.6%を占めていました。業界の知識はあっても、経営の経験が浅いまま社長に就く人が多いことがわかります。

新任社長 就任経緯別 推移

[参照元]全国「後継者不在率」動向調査(2025年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]

外部から招く場合は、業界知識は社内の幹部が補える部分もあるため、自社の経営課題を解決できる経験を優先して人物像を決めるのがおすすめです。

たとえば、販路の拡大が課題なら営業組織を率いた経験、借入金の圧縮や資金繰りの改善が課題なら財務責任者の経験、といった形です。人物像を言葉にしておくと、採用の経路を選ぶときにも、候補者と話すときにも判断がぶれにくくなります。

人材紹介・エグゼクティブサーチ・公的マッチングを使い分ける

経営人材を探す経路は、主に次の4つです。

  • 人材紹介会社:求める人物像を伝えて候補者を紹介してもらう方法です。採用が決まった時点で手数料が発生する成功報酬型が一般的
  • エグゼクティブサーチ:経営層の採用に特化したサーチ会社が、転職市場に出ていない人材にも直接アプローチする方法
  • 公的マッチング:事業承継・引継ぎ支援センターの後継者人材バンクなどを使う方法です。前述のとおり、主に小規模事業者と創業希望者のマッチングが対象に
  • 金融機関や取引先からの紹介:取引のある地域金融機関などに、経営人材の紹介を相談する方法です。帝国データバンクも、承継に関心の高い経営人材を紹介するネットワークなど、金融機関が果たす役割は大きいと指摘

経路によって費用のかかり方や候補者の層が異なるため、1つに絞らず並行して使うと候補者に出会える可能性が高まります。人材紹介会社の手数料の相場や選び方は、次の記事で詳しく解説しています。

関連記事:【企業向け】ハイクラス人材紹介会社の手数料相場とおすすめの紹介エージェント|選び方・採用のコツまで

いきなり社長にせず役員・幹部として段階的に迎える

外部から招いた人材を、入社してすぐに社長にするのは避けたほうが無難です。社内の事情や従業員の気質、取引先との関係を知らないまま経営トップになると、判断を誤ったり、社内の協力を得られなかったりするリスクが高まります。

一般的には、まず取締役や副社長などの役員として迎え、一定期間は現経営者と一緒に経営に携わってもらいます。

その間に、主要な取引先や金融機関へのあいさつ回り、幹部との関係づくり、経営判断の分担を少しずつ進めていきます。中小企業庁の資料でも、後継者を決めてから承継が完了するまでに3年以上かかる割合が半数を超えるとされているため、外部招聘でも引き継ぎの期間を十分にとる計画を立てておきましょう。
[参照元]親族内承継に関する現状分析と今後の検討の方向性について(中小企業庁)

引き継ぎの途中で「やはり合わない」とわかった場合に備えて、役員としての任期や評価の方法をあらかじめ決めておくと、双方にとって納得感のある判断がしやすくなります。

株式・経営者保証・報酬の条件を先に整理しておく

外部の人材が後継者を引き受けるかどうかを左右するのが、株式、経営者保証、報酬の3つの条件です。候補者との面談に入る前に、オーナー側の方針を決めておきましょう。

株式については、オーナーが持ち続けて経営だけを任せるのか、後継者に段階的に取得してもらうのかを決めます。経営権を安定させるには一定の株式を持ってもらうことも選択肢ですが、取得資金の負担が大きいため、税理士や金融機関と方法を相談しておく必要があります。

経営者保証は、外部の人材にとって特に重い条件です。中小企業庁も、事業承継時の経営者保証が後継者候補の確保の障害になっていることを踏まえ、保証の解除に向けた対策を進めています。借入金の保証を後継者に引き継がせる前提で話を進めるのではなく、保証の解除や見直しができないかを、早い段階で金融機関に相談しておきましょう。

報酬については、役員としての固定報酬に加えて、業績に連動する部分を設けるかどうかを検討します。経営を任せる範囲と責任に見合った条件を示すことが、優秀な人材を迎えるうえで欠かせません。

幹部と社員への説明を早めに行い反発を防ぐ

外部から後継者を招くときに見落とされがちなのが、社内への説明です。長く会社を支えてきた幹部ほど、「なぜ自分ではなく外部の人なのか」と感じやすく、説明が不足すると協力を得られなかったり、退職につながったりすることもあります。

外部招聘を決めた理由と、既存の幹部に期待する役割は、候補者が入社する前に経営者自身の言葉で伝えておきましょう。特に、後継者の経営を支える番頭役の幹部には、事前に個別で相談しておくと協力を得やすくなります。

取引先や金融機関にも、紹介のタイミングと引き継ぎの予定を早めに伝えておくことで、承継後の取引が安定しやすくなります。

経理・財務や法務に強い経営幹部を迎えたい場合は、管理部門に特化した人材紹介サービスに相談するのも一つの方法です。BEET-AGENTは、株式会社アシロが運営する、管理部門と士業の採用支援に特化した人材紹介サービスです。

経理・財務、法務、人事労務、経営企画、内部監査などの人材について、担当者クラスから部長クラス、執行役員・取締役、CXOまでのポジションで採用を相談できます(2026年10月時点の採用問い合わせフォームによる)。

管理部門の実務を知るアドバイザーが、企業側と求職者側の両方を担当する「両手型」で対応しているため、自社の管理部門の体制や求める役割を伝えたうえで候補者を紹介してもらえます。

社長の後継者そのものを探すサービスではありませんが、後継者を財務面から支えるCFO候補や、将来の経営幹部候補となる管理部門の人材を採用したいときの相談先になります。

[参照元]管理部門・バックオフィス人材の採用支援 |BEET-AGENT

事業承継を支える管理部門と社外役員を整える

後継者を見つけることと同じくらい大切なのが、後継者が経営に集中できる体制を整えておくことです。ここでは、承継の受け皿になる管理部門と、後継者を外から支える社外役員の整え方を解説します。

後継者が最初につまずきやすいのは財務と資金繰りである

後継者が社長に就いたあと、最初に直面しやすいのが財務の問題です。中小企業では、資金繰りや金融機関との交渉を先代の経営者が一人で担ってきたケースが多く、その知識や関係が引き継がれないまま承継が進むことがあります。

帝国データバンクは、事業承継の局面では後継者が株式や事業用資産を買い取るケースが多く、資金調達を含めた承継のノウハウなどで金融機関の果たす役割が大きいと指摘しています。後継者は株式の取得資金の手当てと、会社の資金繰りの両方に向き合うことになります。

社内出身の後継者であっても、営業や製造など現場の出身で、財務の経験がないことは珍しくありません。承継前に財務の状況を誰でも把握できる形にしておくことが、後継者の負担を大きく減らします。

経理・財務の責任者を先に採用すると承継が進めやすい

財務の負担を減らすうえで効果的なのが、承継の前に経理・財務の責任者を採用しておくことです。月次の決算や資金繰り表の作成、金融機関への業績報告を担当者が回せる体制になっていれば、後継者は数字を確認して判断することに集中できます。

承継のタイミングで先代の経営者と財務の担当者が同時に抜けてしまうと、後継者は会社の数字を十分に把握できないまま経営を担うことになります。財務の責任者を先に迎えておけば、先代から数字の見方や金融機関との関係を引き継ぐ期間を確保できます。

後継者と財務の責任者が二人三脚で経営にあたる体制は、外部招聘や社内承継の場合に特に効果的です。

株式の集約や契約の整理には法務の体制が欠かせない

事業承継では、株式や契約に関する法的な整理も必要になります。代表的なのが、親族や元役員などに分散している株式を後継者のもとに集める作業です。

中小企業庁は、所在がわからない株主の株式を取得する手続きの期間を5年から1年に短縮する特例や、後継者が先代経営者の推定相続人との間で遺留分に関する合意をできる制度を設けています。

取引先との契約書に、経営者や株主が変わった場合の取り扱いを定めた条項が含まれていないかを確認することも大切です。顧問弁護士や司法書士と連携しながら、社内でも契約書や株主名簿を管理できる担当者を置いておくと、承継の手続きを滞りなく進められます。

社外取締役・監査役が後継者の意思決定を支える

後継者の経営を外から支える役割として注目したいのが、社外取締役や監査役です。社外取締役は、会社の業務を直接執行しない立場から、取締役会で経営の判断に助言したり、経営をチェックしたりする役割を担います。

承継の前後は、後継者が初めて大きな経営判断を担う時期です。経営経験の豊富な社外取締役がいれば、後継者は一人で判断を抱え込まずに済みます。

また、先代の経営者が会長として残る場合も、利害関係のない社外取締役が議論に加わることで、先代と後継者の意見の対立を客観的に整理しやすくなります。

弁護士や公認会計士などの専門家を社外役員に迎えれば、株式や契約、財務の整理についても助言を受けられます。社外取締役の役割や必要性については、次の記事で詳しく解説しています。

関連記事:社外取締役はなぜ必要なのか|設置義務が課される場合・期待される役割などを解説

非上場の中小企業でも社外役員は任意で置ける

会社法で社外取締役の設置が義務づけられているのは、上場会社など一定の条件を満たす会社に限られています。

非上場の中小企業には設置の義務はありませんが、任意で社外取締役や社外監査役を置くことは可能です。[参照元]会社法 | e-Gov 法令検索

義務ではないからこそ、承継の時期に合わせて必要な期間だけ迎えるなど、柔軟な形を選べます。役員として迎えるほどではない場合は、顧問として定期的に助言を受ける形も選択肢になります。

社外取締役や監査役の候補者を探す方法としては、知人の紹介のほか、社外役員のマッチングサービスを利用する方法があります。EXE[エグゼ]は、株式会社アシロが運営する社外取締役・監査役のマッチングサービスです。

EXE

経験年数10年以上、兼務社数5社未満などの基準を満たした候補者が2,000名以上登録しており、登録者の46.6%が弁護士などの士業有資格者です(2026年10月時点の公式サイト掲載情報)。主に上場企業や上場を予定している企業に向けて、社外取締役・監査役の経験がある弁護士や公認会計士などを紹介しています。

社長の後継者を紹介するサービスではありませんが、承継の前後に経営を監督・助言してくれる社外取締役や監査役を迎えたい場合は、無料の選任相談を利用できます。

[参照元]EXE[エグゼ]|社外取締役・監査役マッチングサービス

後継者不足の相談先と専門家の役割を使い分ける

後継者不足の対策は、経営者一人で進められるものではありません。

株式や税金、契約、資金、人材と、検討する内容ごとに頼るべき相談先が異なります。ここでは、主な相談先と、それぞれに何を相談できるかを整理します。

相談先ごとに対応できることを一覧表で比べる

中小企業庁は、事業承継で頼れる専門家の役割を次のように整理しています。これに金融機関と人材紹介会社を加えると、主な相談先は次のとおりです。

相談先 主に相談できること 相談するタイミング
事業承継・引継ぎ支援センター 承継全般の相談、承継計画の策定、M&Aのマッチング 何から始めるか決まっていない段階
税理士 株価の評価、生前贈与、事業承継税制の活用 株式の引き継ぎ方を考える段階
公認会計士 企業価値の評価、承継スキームの立案、M&Aの実施支援 承継の方法を具体的に設計する段階
弁護士 交渉や契約書の作成、株式や相続をめぐる問題の整理 株式の集約や契約の見直しが必要な段階
司法書士 商業登記・不動産登記、株式や事業用不動産の承継 代表者の変更や株式の移転を行う段階
中小企業診断士 事業承継診断、承継計画の策定、後継者教育 会社の現状を整理する段階
金融機関 承継資金の融資、経営者保証の見直し 株式の取得資金や保証を検討する段階
人材紹介会社 経営幹部候補や管理部門の人材の採用 外部招聘や体制づくりを進める段階

[参照元]事業承継の支援策 | 中小企業庁

事業承継・引継ぎ支援センターは無料で全体像を相談できる

最初の相談先として使いやすいのが、全国47都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターです。

親族内承継からM&Aまで、あらゆる承継の相談を原則無料で受け付けています。必要に応じて外部の専門家を紹介してもらえるため、どの専門家に何を相談すべきかわからない段階の入り口として役立ちます。

税理士・公認会計士は株価評価と税金対策を担う

税理士は、自社株の評価や生前贈与の進め方、事業承継税制の活用を助言します。

業績のよい会社ほど株式の評価額が高くなり、贈与税や相続税の負担が大きくなりやすいため、早めに相談しておきましょう。

公認会計士は、企業価値の評価や承継の方法(スキーム)の立案、M&Aの実施を支援し、株式の譲渡価格を決める場面で交渉の土台をつくります。

弁護士・司法書士は株式の集約や遺留分の問題を整理する

弁護士は、交渉や契約書の作成を通じて承継が円滑に進むよう支援します。

親族に分散した株式の集約や、後継者以外の相続人との遺留分をめぐる調整など、トラブルになりやすい問題を事前に整理するうえで頼りになります。

司法書士は、代表者の変更に伴う登記や事業用不動産の名義変更を担い、種類株式や民事信託を使って経営権を後継者に集める方法も相談できます。

金融機関は経営者保証と承継資金の相談に乗る

金融機関は、株式の買い取り資金や相続税の支払い資金の融資、経営者保証の見直しを相談する相手です。

帝国データバンクの調査では、中小企業の後継者不在率をメインバンク別にみると、メガバンクが44.2%、政府系金融機関が42.3%だったのに対し、信用金庫は57.9%、信用組合は56.2%でした。

取引先の金融機関がどこまで承継支援に対応しているかを確認し、必要に応じて公的な支援機関にも相談しましょう。
[参照元]全国「後継者不在率」動向調査(2025年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]

人材紹介会社は後継者候補や管理部門の採用を支援する

外部から経営人材を招く場合や、承継の前に管理部門を整える場合は、人材紹介会社が相談先になります。

経営幹部であればハイクラス層に強い会社、経理・財務や法務の責任者であれば管理部門に特化した会社というように、採用したい人材に合わせて選ぶと、条件に合う候補者に出会いやすくなります。

後継者不足対策で使える国の支援制度を確認する

国は、事業承継にかかる税金や費用、経営者保証の負担を軽くするための制度を用意しています。制度の期限や要件は改正されることがあるため、利用を検討する際は必ず最新の情報を確認してください。

事業承継税制で株式承継時の税負担を抑えられる

事業承継税制は、非上場の会社の株式を後継者に贈与・相続する際にかかる贈与税・相続税の納税を猶予する制度です。期間限定の特例措置では、株式の承継に伴う贈与税・相続税の負担を実質ゼロにできます。

中小企業庁によると、法人版の特例措置を使うには、令和9年(2027年)9月30日までに特例承継計画を提出し、令和9年12月31日までに事業承継を行う必要があります。個人事業主向けの個人版は、令和10年(2028年)9月30日までに計画を提出し、同年12月31日までに承継を行うことが条件です。
[参照元]事業承継の支援策 | 中小企業庁

猶予を受けたあとも、贈与または相続から5年間は代表者として事業を続け、雇用を確保することや、株式を持ち続けることなどの要件があります。

要件を満たせなくなると猶予された税金を納める必要があるため、税理士と相談しながら計画的に活用しましょう。

事業承継・M&A補助金で承継にかかる費用を補える

事業承継・M&A補助金は、事業承継やM&Aによって経営資源を引き継ぐ中小企業を支援する補助金です。2026年5月に公表された第15次公募では、次の4つの枠が設けられていました。

  • 事業承継促進枠:5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している会社の設備投資などを補助
  • 専門家活用枠:M&Aにかかる仲介手数料やデュー・ディリジェンス(買収監査)などの専門家費用を補助します。対象はM&A支援機関登録制度に登録された仲介業者などへの費用に限られる
  • PMI推進枠:M&A後の経営統合(PMI)にかかる専門家費用や設備投資を補助
  • 廃業・再チャレンジ枠:事業承継やM&Aに伴って既存の事業を廃業し、新たな取り組みに挑戦する際の廃業費用を補助

補助金は公募の回ごとに受付期間や補助率、要件が変わります。申請には電子申請用のGビズIDプライムアカウントが必要で、取得までに2〜3週間程度かかるとされているため、利用を考えている場合は早めに準備しておきましょう。
[参照元]中小企業生産性革命推進事業「事業承継・M&A補助金」(十五次公募)の公募要領を公表します | 中小企業庁

経営者保証を外すための仕組みが整いつつある

経営者保証は、後継者候補が承継をためらう大きな理由の一つです。

中小企業庁は、事業承継時に経営者保証が後継者候補の確保の障害になっていることを踏まえ、金融機関と中小企業の双方の取り組みを促す総合的な対策を進めています。

また、株式の買い取りや相続税の支払いなど、承継時に必要な資金については、融資や信用保証を受けられる制度も用意されています。
[参照元]事業承継の支援策 | 中小企業庁

保証を外せるかどうかは、会社の財務状況や金融機関の判断によって変わります。

決算書の信頼性を高めたり、会社と経営者個人のお金を明確に分けたりしておくことが、保証の見直しを相談するうえでの前提になります。この点でも、承継前に経理・財務の体制を整えておくことが役立ちます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 後継者不足の対策はいつから始めるべきですか?

遅くとも経営者が60代のうちに始めることをおすすめします。

中小企業庁の資料では、後継者を決めてから承継が完了するまでに3年以上かかる割合が半数を超えています。50代のうちに後継者候補の棚卸しと会社の数字の見える化を始めておくと、選べるルートが広がります。

Q2. 後継者がいない場合、M&A以外にどんな方法がありますか?

社内の役員や従業員を後継者に育てる方法と、外部から経営人材を招く方法があります。

帝国データバンクの2025年の調査では、役員や社員を登用する「内部昇格」が「同族承継」を上回り、東京商工リサーチの調査でも「外部招聘」が増えています。会社を残したい場合は、これらとM&Aを並行して検討しましょう。

Q3. 外部から招いた後継者に株式を渡す必要はありますか?

必ず渡さなければならないわけではありません。オーナーが株式を持ち続けて経営だけを任せる方法もあれば、段階的に株式を取得してもらう方法もあります。

経営権が不安定だと後継者が思い切った判断をしにくくなるため、候補者と面談する前に、税理士や金融機関と相談して方針を決めておきましょう。

Q4. 中小企業でも社外取締役を置けますか?

置けます。会社法で社外取締役の設置が義務づけられているのは上場会社など一定の会社に限られますが、非上場の中小企業も任意で置くことができます。

役員として迎えるほどではない場合は、顧問として助言を受ける形も選択肢です。

Q5. 事業承継の相談は無料でできますか?

事業承継・引継ぎ支援センターでは、承継全般の相談や承継計画の策定、M&Aのマッチング支援などを原則無料で受けられます。

税理士や弁護士に具体的な手続きを依頼する場合は、一般的に費用がかかります。まず無料の窓口で全体像を整理すると、費用を抑えながら進められます。

Q6. 後継者不在率は調査によってなぜ数字が違うのですか?

調査対象の企業の範囲や集計期間が異なるためです。2025年の調査では、帝国データバンクが約27万社を対象に50.1%、東京商工リサーチが16万9,136社を対象に62.60%でした。

どちらも、少なくとも半数前後の企業で後継者が決まっていないことを示している点は共通しています。

Q7. 後継者不足の対策で失敗しやすいのはどんなケースですか?

準備の開始が遅れて選べるルートが狭まるケース、経営権だけを渡して株式や経営者保証の整理を後回しにするケース、1つのルートにこだわってほかの選択肢を検討する時間がなくなるケースがよくみられます。

後継者に相談相手がいないまま判断を抱え込ませてしまうことも、承継後につまずく原因になります。複数のルートを並行して検討し、管理部門や社外役員など後継者を支える体制もあわせて整えましょう。

まとめ

後継者不足は、2025年の調査でも全国の企業の半数前後が抱えている課題です。一方で、承継の形は親族に限らず、社内の役員・従業員や社外の人材へと広がっています。親族に後継者がいないことは、もはや会社をあきらめる理由にはなりません。

後継者不足の対策は、「親族内・社内・外部招聘・M&A」の4ルートから自社に合うものを選ぶことと、管理部門や社外役員など承継を支える体制を整えることの2本立てで考えると進めやすくなります。承継には3年以上かかるケースが多いため、次の3つから今日にでも始めてみてください。

  1. 親族・社内の後継者候補を書き出し、本人の意思をまだ確かめていない人がいないかを確認する
  2. 会社の数字、株式の持ち主、借入金と経営者保証の状況を一覧にして、誰でも把握できる形にする
  3. 事業承継・引継ぎ支援センターや顧問税理士など、相談先を1つ決めて連絡する

外部から経営幹部を迎えたい場合や、承継の前に管理部門を整えたい場合は、BEET-AGENTに管理部門人材の採用を相談できます。

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