新規事業の顧問とは?費用相場・契約の注意点・選び方を解説

2026.10.16 2026.10.16
新規事業の顧問とは?費用相場・契約の注意点・選び方を解説

INTRODUCTION

  1. 新規事業の立ち上げを任されたものの、社内に経験者がいない
  2. 外部の顧問に入ってもらいたいけれど、コンサルタントとの違いが不明
  3. 費用の目安も、契約で何に気をつければいいのかもわからない

こうした悩みを抱えている経営者や事業責任者は少なくありません。

この記事では、新規事業の顧問が担う役割と、コンサルタント・業務委託・社外取締役との違いを整理したうえで、事業のフェーズごとに必要になる専門家、報酬が決まる仕組み、顧問契約で押さえておきたい条項、探し方と導入までの流れを順番に解説します。

経営経験者だけでなく、弁護士や公認会計士・税理士、弁理士といった専門家をどう組み合わせるかにも触れているので、「誰に、何を、どの関わり方で頼めばいいのか」を判断する材料として役立ててください。

この記事の要点

  • 新規事業の顧問は、経験と人脈をもとに意思決定を支える非常勤の助言者で、作業量に対して報酬を払うコンサルタントや業務委託とは報酬の対象が違う
  • 顧問料に公的な相場はなく、関わる頻度と業務範囲で金額が決まります。法律や税務の判断が絡む場面は、弁護士や税理士にしか任せられない業務がある
  • 失敗を防ぐ鍵は、業務範囲・秘密保持・知的財産の帰属を契約書に明記し、顧問の助言を受け止める社内の担当者と決裁の経路を用意しておく

新規事業の顧問とは|経験と人脈で意思決定を支える外部の助言者です

新規事業の顧問とは、新しい事業を立ち上げる企業に対して、自身の経験・専門知識・人脈をもとに助言を行う外部の人材のことです。

多くの場合は非常勤で、月に数回の定例ミーティングや随時の相談を通じて、経営者や事業責任者の判断を支えます。

まずは顧問が担う役割と、似た立場の専門家との違いを整理しておきましょう。

新規事業の顧問が担う4つの役割を押さえる

新規事業の顧問に期待される役割は、大きく分けると次の4つです。

  1. 事業性の壁打ち相手になる
  2. 仮説検証の進め方を設計する
  3. 人脈を使って顧客や提携先を紹介する
  4. 続けるか、方向転換するか、撤退するかの判断材料を示す

1つ目の壁打ちとは、事業アイデアや計画に対して経験者の目線で問いを投げ、穴や見落としを洗い出すことです。

社内のメンバーだけで議論していると、既存事業の常識や上司への遠慮から、厳しい指摘が出にくくなります。

利害関係の薄い外部の経験者が入ることで、「その顧客は本当にお金を払うのか」「競合が真似したらどうなるか」といった問いが自然に出るようになります。

2つ目の仮説検証の設計は、どの順番で何を確かめれば少ない費用で事業性を判断できるかを一緒に考える役割です。

3つ目の人脈の紹介は、業界経験者ならではの価値で、最初の顧客候補や提携先、仕入れ先に話をつないでもらえることがあります。

4つ目の判断材料の提示は見落とされがちですが、新規事業では撤退や方向転換の決断が遅れるほど損失が膨らむため、同じ局面を経験した人の意見は大きな助けになります。

一方で、顧問は原則として「手を動かす人」ではありません。市場調査の実施や資料の作成、営業活動そのものまで期待すると、すれ違いが起きやすくなる点は最初に押さえておきましょう。

顧問・コンサル・業務委託は「何に報酬を払うか」で異なる

新規事業の外部支援には、顧問のほかにコンサルタントや業務委託(実行支援)という形もあります。

どれも外部の人材に助けてもらう点は同じですが、報酬を何に対して払うのかが違います。

項目 顧問 コンサルタント 業務委託(実行支援)
報酬の対象 経験・知見と相談に応じる時間 調査・分析・戦略立案などの作業と成果物 市場調査・営業・開発などの実務
主なアウトプット 助言、判断材料、人脈の紹介 調査報告書、戦略提言、事業計画書 実務の成果(リスト、資料、商談など)
関わり方 非常勤・継続的(月数回の定例など) プロジェクト単位で期間を区切ることが多い 業務量や期間に応じて柔軟に設定
向いている場面 方向性の判断や経験者の視点がほしいとき 調査や戦略づくりをまとめて任せたいとき 社内に手を動かす人が足りないとき
注意点 実務までは担わないのが基本 成果物を実行に移すのは自社 方向性の判断は自社で持つ必要がある


ただし、この区分はあくまで目安です。実際には「顧問」という名前で調査や資料作成まで引き受ける人もいれば、「伴走型コンサル」という名前で定例の助言が中心のサービスもあります。

名称で判断せず、契約の段階で「何をしてもらい、何に対してお金を払うのか」を具体的に確認することが大切です。

なお、顧問契約の多くは雇用契約ではなく、民法上の準委任契約として結ばれます。契約面の注意点は後半の章で詳しく解説します。

社外取締役・社外監査役とは法的な権限と責任がまったく違う

経営に外部の視点を入れる方法として、顧問とよく比べられるのが社外取締役や社外監査役です。

両者は似ているように見えますが、法的な立場はまったく異なります。

社外取締役は会社法上の役員で、株主総会で選任され、取締役会の一員として会社の重要な意思決定に議決権を持ちます。

その分、任務を怠った場合には会社に対して損害賠償責任を負う可能性があります。会社法は社外取締役の要件を定めており、一定の上場会社などには社外取締役を置くことを義務づけています。
[参照元]会社法 | e-Gov 法令検索

これに対して顧問は、会社法に定められた機関ではありません。取締役会での議決権はなく、会社との関係は個別の契約で決まります。権限が小さい分、責任の範囲も契約で決めた内容に限られます。

新規事業との関係でいえば、事業の中身について実務的な助言がほしいなら顧問、新規事業への投資判断を含めて経営全体を監督する立場の人を迎えたいなら社外取締役、という使い分けが基本になります。

上場準備中の企業や、新規事業が会社の命運を左右するほど大きい企業では、社外取締役として経験者を迎える選択肢も検討する価値があります。

社外取締役の役割や選任の考え方は、社外取締役とは?経営における役割とキーマンとしての注目背景・報酬体系も解説で詳しく解説しています。

相談役・参与との違いと上場企業の開示ルールも確認しておく

「顧問」という言葉は、新規事業のために外部から招く専門家だけでなく、社長や会長を退任した人が就く社内の役職を指すこともあります。
相談役や参与と並んで使われることが多く、この場合は名誉職に近い位置づけになっているケースもあります。

こうした相談役・顧問については、役割や報酬が外から見えにくいことがガバナンス上の課題として指摘されてきました。経済産業省のガイドラインでの提言や政府の方針を受けて、東京証券取引所は2017年8月にコーポレート・ガバナンス報告書の記載要領を改訂し、社長などを退任した人が相談役・顧問に就いている場合の状況を記載する欄を設けました。2018年1月1日以後に提出する報告書から、この新しい様式で記載できるようになっています。
[参照元]相談役・顧問等の開示に関する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」記載要領の改訂について | 日本取引所グループ

この記事で扱う新規事業の顧問は、こうした社内の名誉職としての顧問とは性質が異なり、特定の課題について成果を期待して外部から招く専門家です。

ただ、上場企業や上場を目指す企業が顧問を置く場合は、「どんな役割で、どんな条件で関わってもらっているのか」を外部に説明できる状態にしておくと、株主や投資家からの見え方の面でも安心です。

正社員として採用する場合と比べた向き・不向きを知る

新規事業を担う人材を確保する方法として、顧問と並ぶ選択肢が正社員の採用です。

事業開発の経験者や、経営企画・法務・経理といった管理部門の経験者を採用すれば、社内に知見がたまり、日々の実務も任せられます。

顧問が向いているのは、事業の方向性がまだ固まっておらず、フルタイムの人材を抱えるほど業務量が見えていない段階です。必要な期間だけ、必要な分野の経験者に関わってもらえるため、固定費を抑えながら判断の質を上げられます。

一方で、事業が軌道に乗り、日々の意思決定や実務の量が増えてくると、月に数回しか関わらない顧問だけでは回らなくなります。その段階では、事業責任者や管理部門の担当者を正社員として採用し、顧問は補助的な立場に移ってもらうのが自然な流れです。

判断の目安としては、「週に何時間くらい、その人の知見が必要か」を考えてみるとわかりやすくなります。

月に数時間で足りるなら顧問、週の大半を使ってほしいなら採用や常勤の業務委託を検討しましょう。採用にかかる費用の考え方は、【企業向け】ハイクラス人材紹介会社の手数料相場とおすすめの紹介エージェントで整理しています。

新規事業で顧問が必要になる場面はフェーズによって変わる

新規事業は、構想から撤退判断までいくつかの段階を踏んで進みます。

どの段階にいるかによって、顧問に求める役割も、ふさわしい人物像も変わります。ここでは代表的な4つのフェーズと、顧問を入れる前に社内で整えておくべきことを解説します。

構想・アイデア検証期は事業性を見極める壁打ち相手が効く

構想やアイデア検証の段階では、まだ事業計画も固まっておらず、「この市場に本当にニーズがあるのか」「自社が参入する意味はあるのか」を見極めることが中心になります。

この時期の顧問に求められるのは、仮説の甘さを指摘し、検証の順番を一緒に考えてくれる壁打ち相手としての役割です。

ふさわしいのは、同じ業界や近い市場で事業を立ち上げた経験がある人です。顧客の購買行動や業界特有の商習慣を知っているため、社内では気づきにくい前提の誤りを早い段階で指摘してもらえます。この時期は社内の検討も流動的なので、月に1〜2回の定例と、必要に応じたチャットでの相談といった軽めの関わり方で始めるケースが一般的です。

注意したいのは、この段階で顧問の意見を「正解」として扱いすぎないことです。

経験者の意見は貴重ですが、過去の成功体験がそのまま新しい市場に当てはまるとは限りません。

顧問の指摘は検証すべき仮説として受け止め、顧客へのヒアリングや小さなテスト販売で確かめる姿勢を持っておくと、助言の価値を最大限に引き出せます。

事業計画・資金調達期は数字と制度に強い専門家が要る

アイデアの検証が進み、事業計画を作って社内決裁や資金調達に進む段階では、事業の見立てを数字に落とし込める専門家の支えが必要になります。

売上計画や費用の見積もり、資金繰りの計画、出資や融資を受ける際の資料づくりなどは、事業経験者の勘だけでは精度が上がりません。

この段階で頼りになるのが、公認会計士や税理士、金融機関出身の専門家です。国も中小企業の事業計画づくりを支援する仕組みとして、税務・金融・企業財務の専門知識と実務経験が一定水準以上の個人や法人を「認定経営革新等支援機関」として認定しています。

認定支援機関は中小企業庁のサイトで検索でき、事業計画の策定支援や実行後のフォローを相談できます。
[参照元]認定経営革新等支援機関 | 中小企業庁

また、新しい会社を作るのか社内の一部門として始めるのか、他社と合弁にするのかといった事業の器の選び方も、この時期に決めておきたい論点です。

税金や将来の撤退のしやすさに影響するため、事業経験者の顧問だけでなく、会計・税務と法務の専門家にも早めに相談しておくと手戻りを防げます。

立ち上げ・初期営業期は人脈と販路を持つ顧問が力を発揮する

計画が承認され、実際にサービスを始める段階に入ると、課題は「最初の顧客をどう獲得するか」に移ります。この時期に力を発揮するのが、業界内に人脈を持ち、決裁者に直接話をつなげられる顧問です。

特に法人向けの事業では、実績のない新規事業がいきなり大手企業と取引を始めるのは簡単ではありません。

業界で信頼されている人からの紹介があるだけで、商談の入口に立てる確率は大きく変わります。営業に特化した顧問を紹介するサービスが多く存在するのも、こうしたニーズがあるためです。

ただし、人脈の価値は事前に見極めにくいものです。

  1. 「大手企業に知り合いが多い」といった抽象的な説明だけで契約するのではなく
  2. 自社のターゲットとなる業界や企業にどの程度つながりがあるのか
  3. 過去にどんな紹介をしてきたのか

面談で具体的に確認しましょう。

紹介件数や成約に応じて報酬を払う成果報酬型の契約が選ばれやすいのもこのフェーズの特徴ですが、報酬の条件は後のトラブルになりやすいため、契約書で明確にしておく必要があります。

拡大・撤退判断期は経営経験者の客観的な視点が役立つ

事業が一定の売上を上げ始めると、次は「追加の投資をして拡大するか」「方向を変えるか」「撤退するか」という判断を迫られます。

新規事業の担当者は思い入れが強くなりやすく、社内の評価にも関わるため、冷静な判断が難しくなる局面です。

このフェーズで頼りになるのは、事業の拡大と撤退の両方を経験した経営者や、企業の売却・統合に関わった経験を持つ人です。

どの数字を見て判断すべきか、撤退する場合に顧客や取引先、従業員への影響をどう抑えるかといった具体的な助言は、同じ局面をくぐり抜けた人でなければ難しいものです。

また、新規事業が会社全体の業績に影響するほど大きくなった場合は、顧問としての助言にとどまらず、社外取締役として取締役会に参加してもらい、経営全体の監督の中で判断してもらう方法もあります。

投資や撤退の判断を取締役会でしっかり議論できる体制を作ることは、株主への説明責任を果たすうえでも意味があります。

顧問を入れる前に社内で用意しておくべきことがある

どのフェーズで顧問を入れるにしても、社内側の受け入れ体制が整っていないと、せっかくの助言が活かされずに終わってしまいます。顧問を探し始める前に、次の4点を準備しておきましょう。

  • 顧問に任せたい課題を一文で書けるようにしておく
  • 顧問とやり取りする社内の担当者を決めておく
  • 助言を受けて判断を下す決裁者を決め、定例に参加してもらう
  • 顧問に共有してよい情報と共有してはいけない情報の線引きをしておく

なかでも見落とされやすいのが、決裁者の関与です。担当者だけが顧問の話を聞き、その内容を持ち帰って社内で説明し直す形だと、助言の意図が薄まり、判断が先送りされがちです。

少なくとも月に1回は、決裁権を持つ人が顧問と直接話す場を設けておくと、助言が実際の意思決定につながりやすくなります。

経営顧問だけでは足りない|新規事業に関わる専門家の種類

新規事業の顧問と聞くと、事業経験のある経営者や業界の専門家をイメージする人が多いかもしれません。

しかし実際の新規事業では、法律や税務、知的財産の判断が必要になる場面が数多くあり、そのなかには資格を持つ専門家でなければ扱えない業務もあります。

ここでは、新規事業に関わる主な専門家の種類と役割を整理します。

業界経験者・事業開発経験者は事業の勝ち筋を一緒に考える

いわゆる経営顧問や技術顧問として関わるのが、業界での実務経験や事業開発の経験を持つ人です。

大手企業の元役員、新規事業の責任者を務めた人、起業して事業を売却した人、特定の技術分野の研究開発に長く携わった人など、経歴はさまざまです。

この人たちの強みは、市場や顧客、業界構造についての実感を伴った知識にあります。

  • 「この業界では誰が購買を決めているのか」
  • 「どんな条件なら取引先が乗ってくるのか」

といった、統計や公開情報からは見えにくい情報を持っているため、事業の勝ち筋を一緒に考える相手として最も頼りになります。

ただし、経験の幅には個人差が大きく、ある業界では一流でも別の業界ではまったく通用しないこともあります。顧問を選ぶ際は、肩書きの大きさよりも、自社が挑もうとしている市場やフェーズとの近さを重視しましょう。

また、業界経験者であっても、法律の解釈や税務の判断を有償で引き受けることは法律で制限されています。この点は次の項目で詳しく説明します。

弁護士は業法・許認可・利用規約のリスクを先回りしてつぶす

新規事業で法務の専門家が必要になる場面は、多くの人が想像するより早く訪れます。

新しいサービスが既存の法律の規制にかかるかどうか

  • 許認可や届出が必要かどうか
  • 利用規約や契約書をどう作るか
  • 個人情報をどう扱うか

といった論点は、サービスを始める前に検討しておかなければなりません。

ここで押さえておきたいのが、法律事務を扱える人は法律で限られているという点です。弁護士法第72条は、弁護士や弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で法律事件に関する鑑定や代理などの法律事務を業として取り扱うことを禁じています。

業界経験の豊富な顧問であっても、契約書の法的な検討や規制の解釈を有償で引き受けることには限界があるということです。

規制の適用範囲がはっきりしない新しいサービスの場合は、国の制度を使う方法もあります。経済産業省が案内する「グレーゾーン解消制度」は、新しく始める事業について、規制の解釈や適用の有無を事前に確認できる仕組みです。

こうした制度の活用を含め、事業の企画段階から弁護士に関わってもらうと、サービス開始後に規制当局から指摘を受けて事業が止まるリスクを減らせます。
[参照元]グレーゾーン解消制度・プロジェクト型「規制のサンドボックス」・新事業特例制度 (METI/経済産業省)

弁護士との関わり方は、月額の顧問契約を結ぶ方法と、案件ごとにスポットで依頼する方法があります。

新規事業の立ち上げ期は論点が集中しやすいため、一定期間だけ顧問契約を結び、気軽に相談できる状態を作っておくのも一つの方法です。

公認会計士・税理士は事業計画・資金調達・税務の設計を支える

事業計画の数字づくりや資金調達、税務の設計を支えるのが、公認会計士と税理士です。

新規事業では、売上が立つまでの赤字をどの程度見込むか、どのタイミングでいくら資金が必要か、出資と融資をどう組み合わせるかといった判断が欠かせません。会計の専門家が入ることで、社内決裁や投資家への説明に耐えられる計画を作りやすくなります。

税務の面では、新規事業を社内の部門として始めるか、子会社として切り出すかによって、損失の扱いや税負担が変わることがあります。こうした税務の判断や申告の代理、税務相談については、税理士法第52条により、税理士や税理士法人でない者は原則として行ってはならないと定められています。

経営顧問から一般的な助言をもらうことはできても、具体的な税務判断は税理士に確認するのが確実です。
[参照元]税理士法 | e-Gov 法令検索

公認会計士は、監査やM&Aの実務経験を持つ人も多く、将来の上場や事業売却を見据えた新規事業では特に心強い存在です。

事業の数字を管理する仕組みづくりや、新規事業の評価指標の設計まで相談できる人を選ぶと、社内に知見が残りやすくなります。

弁理士は特許・商標などの知的財産を早めに押さえる

新規事業では、サービス名やロゴ、独自の技術やビジネスの仕組みといった知的財産の扱いも重要です。ここで頼りになるのが、特許や商標の出願を専門とする弁理士です。

商標については、同じか似ている商標について複数の出願があった場合、先に出願した人だけが登録を受けられるのが原則です。サービス名を決めて広告やプレスリリースを出したあとで、他社に先に出願されていたことに気づくと、名前の変更を迫られることもあります。
[参照元]商標法 | e-Gov 法令検索

特許についても、出願前に公に知られた発明や、刊行物やインターネットで公開された発明は、原則として特許を受けられません。

例外として救済を受けられる規定もありますが、所定の手続きが必要です。

  • 展示会での発表や顧客向けの説明資料の配布
  • 外部の顧問との打ち合わせ資料の扱い など

何気ない情報発信が権利取得の妨げになることもあるため、公開の前に弁理士に相談しておくと安心です。
[参照元]特許法 | e-Gov 法令検索

課題別に相談先を選べる早見表を使う

ここまで紹介した専門家を、新規事業でよくある課題ごとに整理すると次のようになります。

1人の顧問にすべてを期待するのではなく、課題に応じて相談先を組み合わせるのが新規事業を進めるうえでの現実的な考え方です。

よくある課題 主な相談先 関わり方の例
事業アイデアの妥当性を確かめたい 業界経験者・事業開発経験者 月1〜2回の定例で壁打ち
最初の顧客や提携先を見つけたい 人脈のある業界経験者・営業顧問 紹介ベースの関与、成果報酬を組み合わせることも
新しいサービスが規制にかからないか確かめたい 弁護士 スポット相談、立ち上げ期のみ顧問契約
利用規約や取引先との契約書を整えたい 弁護士 契約書の作成・レビューをスポットで依頼
事業計画の数字や資金調達の準備をしたい 公認会計士・税理士・認定支援機関 計画策定期に集中的に関与
子会社化など事業の器と税務を決めたい 税理士・公認会計士・弁護士 設計段階でスポット相談
サービス名や技術を守りたい 弁理士 公開前の出願相談
新規事業を含めて経営全体を監督してほしい 社外取締役 取締役会への参加

自社の課題がどの行に当てはまるかを確認し、優先度の高いものから相談先を決めていくと、顧問探しの方向性がはっきりします。

新規事業の顧問の費用相場と報酬|報酬額の決まり方とは

顧問を検討するとき、多くの人が最初に知りたいのが費用です。

ただ、顧問料は法律や公的な基準で決まっているものではなく、顧問と企業の個別の交渉で決まります。

ここでは、金額の目安を鵜呑みにせずに予算を考えられるよう、報酬が決まる仕組みと、契約前に確認しておきたい費用まわりの論点を解説します。

公的な統計はなく、報酬は個別の交渉で決まる

まず前提として、新規事業の顧問料について、国や業界団体がまとめた公的な統計はありません。

インターネット上には「月額◯万円が相場」といった情報が数多くありますが、その多くは顧問紹介サービスやコンサルティング会社が自社の経験から示している目安で、調査の対象や時期が明らかにされていないものも少なくありません。

参考になるのは、サービスを運営する会社自身が公開している目安です。

たとえば顧問紹介サービスを運営するマイナビは、自社メディアで、関与の頻度に応じた月額の目安として、月1回の壁打ち中心なら5万〜10万円、月2〜4回の会議参加や案件レビューなら10万〜30万円、週1〜2日の実務参画なら30万〜80万円と説明しています。あくまで1社が示す目安であり、統計データではない点には注意が必要です。

実際の金額は、顧問の経歴、専門分野の希少さ、関わる頻度、業務の範囲、成果報酬の有無によって大きく変わります。

「相場がいくらか」よりも、「自社が何をどのくらい頼みたいのか」から逆算して予算を組むほうが、納得感のある契約につながります。

月額固定型・時間(スポット)型・成果報酬型の3つで考える

顧問の報酬の決め方は、大きく次の3つに分けられます。

報酬の型 報酬の決まり方 向いている場面 注意点
月額固定型 毎月決まった金額を支払う 定例の壁打ちや継続的な相談をしたいとき 稼働が少ない月も同じ金額がかかる
時間(スポット)型 相談した時間や回数に応じて支払う 特定の論点だけ意見がほしいとき、相性を試したいとき 相談が増えると割高になりやすい
成果報酬型 紹介した商談の成約や売上などに応じて支払う 人脈を使った顧客紹介を頼みたいとき 成果の定義があいまいだと揉めやすい

新規事業の立ち上げ期は、どの程度の関与が必要かを最初から正確に見積もるのが難しいものです。

最初の1〜2か月はスポット型や少なめの月額で始めて相性と効果を確かめ、手応えがあれば関与を増やすという段階的な進め方なら、大きな失敗を避けられます。

成果報酬型を選ぶ場合は、何をもって「成果」とするのかを具体的に決めておくことが欠かせません。

紹介した企業との商談が成立した時点なのか、契約が締結された時点なのか、入金された時点なのか、また契約期間が終わったあとに成約した案件は対象になるのかといった点を、あらかじめ契約書に書いておきましょう。

関与の頻度と業務範囲によって金額が大きく変わる

同じ「月額顧問」でも、中身によって金額は大きく変わります。金額を左右する主な要素は次のとおりです。

  • 定例ミーティングの頻度と時間
  • 定例以外のチャットやメールでの相談に応じる範囲
  • 資料の確認やレビューなど、作業を伴う依頼の有無
  • 商談への同席や取引先への紹介の有無
  • 顧問の経歴と、その分野で同じ経験を持つ人の希少さ

見積もりを比べるときは、金額だけでなく、これらの要素がそろっているかを確認することが大切です。

片方は定例のみ、もう片方は商談への同席や資料レビューまで含む、という状態で金額だけを比べても意味がありません。依頼したい内容を一覧にして候補者に示し、同じ条件で見積もりを出してもらうと、比較がしやすくなります。

また、新規事業の顧問は、事業の進み具合によって必要な関与の量が変わります。

立ち上げ直後は相談が多くても、事業が安定すると月に1回の定例で十分になることもあります。3か月ごとなど、報酬と業務範囲を見直す時期をあらかじめ決めておくと、実態に合わない金額を払い続けることを防げます。

顧問紹介サービスを使うときは手数料の仕組みも確かめる

顧問紹介サービスを通じて顧問と契約する場合は、顧問に払う報酬とは別に、サービスの利用料がかかるのが一般的です。料金の仕組みはサービスによって異なり、主に次のような形があります。

  • 顧問への報酬にサービス会社の手数料を上乗せして、毎月まとめて支払う形
  • 成約時に紹介手数料を支払い、以後は顧問と直接契約する形
  • プラットフォームの利用料を支払い、顧問の検索やスカウトは自社で行う形

注意したいのは、多くの顧問紹介サービスが料金を公開しておらず、問い合わせ後の見積もりで金額が決まるという点です。

見積もりを依頼する際は、顧問本人に支払われる金額とサービス会社の手数料の内訳、契約期間の縛りの有無、途中で顧問を交代できるかどうか、契約終了後に顧問と直接契約してよいかどうかを確認しておきましょう。

特に最後の点は、サービスの規約で制限されている場合があるため、事前に把握しておくと後のトラブルを防げます。

個人の顧問に払う報酬は源泉徴収が必要になる場合がある

見落とされやすいのが、源泉徴収の問題です。会社が個人に報酬を支払う場合、その報酬の種類によっては、支払う側の会社が所得税などを差し引いて国に納める必要があります。

国税庁によると、弁護士・公認会計士・税理士などの特定の資格を持つ人への報酬・料金は、源泉徴収の対象になります。たとえば居住者である弁護士や税理士に報酬を支払う場合、1回の支払額が100万円以下の部分は10.21%、100万円を超える部分は20.42%の税率で源泉徴収を行います。士業の専門家と個人で顧問契約を結ぶ場合は、この点を前提に支払いの手続きを整えておく必要があります。
[参照元]No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金|国税庁

資格を持たない経営顧問や業界経験者への報酬が源泉徴収の対象になるかどうかは、業務の内容によって判断が分かれます。国税庁は、謝礼や研究費などの名目で支払っていても、実態が報酬・料金と同じであれば源泉徴収の対象になるとしています。

名目だけで判断せず、契約前に顧問税理士に確認しておくと安心です。なお、支払先が法人の場合は、源泉徴収の対象となる範囲が限られています。
[参照元]No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

正社員を採用した場合のコストと比べてみる

顧問料が高いか安いかを判断するには、同じ役割を正社員の採用で埋めた場合のコストと比べてみるのが有効です。

正社員を採用する場合、給与のほかに、会社が負担する社会保険料、採用活動の費用、人材紹介会社を使った場合の紹介手数料、入社後の教育にかかる時間などが発生します。さらに、新規事業がうまくいかずに撤退した場合でも、雇用した人材との関係はすぐには解消できません。

顧問の場合は、こうした固定的な負担がなく、必要な期間と範囲に絞って費用をかけられます。一方で、月に数回しか関わらない顧問に日々の実務を任せることはできません。つまり、顧問と正社員は単純に金額で比べるものではなく、「判断の質を上げるための費用」と「実務を回すための費用」という役割の違いで比べるべきものです。

実務の担い手がいない状態で顧問だけを入れても、助言を実行に移す人がいないため成果は出にくくなります。

新規事業の責任者や管理部門の担当者を採用するのか、既存の社員を充てるのかをあわせて検討し、顧問の費用と実務担当者の費用をセットで予算に組み込みましょう。採用の費用感については、【企業向け】ハイクラス人材紹介会社の手数料相場とおすすめの紹介エージェントもあわせて参考にしてください。

公的な無料相談窓口も最初の選択肢になる

本格的に顧問を探す前に、公的な相談窓口を使ってみるのも一つの方法です。国が設置した「よろず支援拠点」は、中小企業・小規模事業者や創業予定の人などを対象に、経営上の相談に何度でも無料で応じている窓口で、全国47都道府県に設置されています。
[参照元]よろず支援拠点全国本部

公的窓口は、特定の分野に深く入り込んで継続的に伴走してもらう用途には向かない場合もありますが、「自社の新規事業にどんな専門家が必要なのか」を整理する最初の相談先としては十分に役立ちます。

前の章で紹介した認定経営革新等支援機関とあわせて、民間の顧問を探す前の選択肢として覚えておくとよいでしょう。

顧問契約で失敗しないために契約書へ入れるべき項目

顧問とのトラブルの多くは、契約の段階で取り決めを曖昧にしたことから生まれます。

特に新規事業では、まだ世に出ていない事業アイデアや顧客情報を顧問と共有するため、情報の扱いや成果物の権利を決めておかないと、取り返しのつかない事態になりかねません。

ここでは顧問契約で押さえておきたい項目を順に解説します。なお、実際の契約書の作成やレビューは、弁護士に依頼することをおすすめします。

顧問契約は雇用ではなく準委任契約として結ぶことが多い

顧問契約は、会社が顧問を雇う雇用契約ではなく、民法上の委任または準委任契約として結ばれることが一般的です。

委任は法律行為を相手に任せる契約で、法律行為ではない事務を任せる場合には同じルールが準用されます。経営上の助言は法律行為ではないため、顧問契約の多くは準委任契約にあたります。

準委任契約には、知っておきたいルールがいくつかあります。まず、受任者である顧問は、善良な管理者の注意をもって業務を行う義務を負います。

一方で、契約に報酬の定めがなければ報酬を請求できないとされているため、報酬額や支払い時期は契約書に明記しておく必要があります。

また、委任契約は各当事者がいつでも解除できますが、相手に不利な時期に解除した場合などには損害賠償の責任が生じることがあります。
[参照元]民法 | e-Gov 法令検索

準委任契約は、仕事の完成を約束する請負契約とは異なり、「事業を成功させること」を顧問に約束させるものではありません。成果が出なかったことだけを理由に報酬を返してもらうことは難しいため、何をしてもらうのかを具体的に決めておくことが重要になります。

業務範囲と成果物をできるだけ具体的に書く

顧問契約で最も揉めやすいのが、業務範囲の認識のずれです。会社側は「資料づくりも手伝ってくれると思っていた」、顧問側は「助言だけの約束だった」という食い違いは、契約書に業務範囲が具体的に書かれていないことから生まれます。

契約書には、少なくとも次の項目を書いておきましょう。

  • 定例ミーティングの頻度・時間・形式(対面かオンラインか)
  • 定例以外の相談に応じる範囲と手段(チャット、メール、電話など)
  • 資料のレビューや作成など、作業を伴う業務の有無
  • 商談への同席や取引先の紹介の有無
  • 報告書などの成果物を提出してもらう場合は、その内容と期限
  • 交通費などの経費の負担

業務範囲を広げる場合は、その都度、追加の合意を書面やメールで残しておくと、後から「言った・言わない」の争いになるのを防げます。

秘密保持と情報管理のルールを決めておく

新規事業の顧問には、まだ公表していない事業計画や顧客の情報、技術の情報などを共有することになります。

こうした情報を守るために、秘密保持の条項は欠かせません。顧問契約とは別に秘密保持契約を結ぶ場合もあります。

ここで押さえておきたいのが、法律による保護の条件です。不正競争防止法は「営業秘密」を不正に持ち出したり使ったりする行為を規制していますが、保護を受けるには、その情報が秘密として管理されていることが前提になります。

資料に「社外秘」と表示する、共有するファイルのアクセス権を限定するといった管理をしていなければ、いざというときに法律の保護を受けられない可能性があります。[参照元]不正競争防止法 | e-Gov 法令検索

契約書では、秘密情報の範囲、目的外での使用の禁止、契約終了後に資料を返却・廃棄する義務、秘密保持義務が契約終了後も続く期間などを定めておきましょう。

顧問が他社にも関わっている場合は、他社の情報を自社に持ち込まないよう求めることも、自社を守るうえで大切です。

契約書の作成、レビュー依頼を弁護士に依頼したい場合は『企業法務弁護士ナビ』などのポータルサイトから、企業法務に詳しい弁護士を探せます。

アイデアや成果物の知的財産の帰属を明確にする

見落とされやすいのが、顧問との議論から生まれたアイデアや成果物の権利が誰のものになるかという問題です。

たとえば特許法では、従業員や役員が職務の中で行った発明については、あらかじめ会社に権利を取得させる定めを置くことが認められています。

しかし外部の顧問は、原則として従業員や役員にあたらないため、この仕組みはそのまま当てはまりません。顧問が中心となって生み出した発明について、契約で何も決めていなければ、権利の扱いをめぐって争いになるおそれがあります。
[参照元]特許法 | e-Gov 法令検索

資料や文章などの成果物についても同じです。著作権は原則として作成した人に生じ、会社に移すには譲渡の合意が必要になります。

著作権法では、翻案や二次的著作物の利用に関する権利は、譲渡の対象として特に明記しなければ譲渡した側に残るものと推定されるため、契約書ではこれらの権利も含めて譲渡する旨を書いておくと安心です。
[参照元]著作権法 | e-Gov 法令検索

顧問がもともと持っていたノウハウまで会社のものにするのは現実的ではありません。

  • 「契約前から顧問が持っていた知識は顧問に残る」
  • 「契約期間中に自社のために作った成果物や生まれた発明は自社に帰属する」

というように、線引きをはっきりさせておくのが一般的な考え方です。

競業・利益相反の有無を事前に確認する

業界経験が豊富な顧問ほど、同じ業界の複数の企業に関わっている可能性があります。競合企業の顧問も兼ねていると、自社の新規事業の情報が意図せず伝わるおそれがあり、顧問自身も判断に迷う立場に置かれます。

契約前には、現在関わっている企業や業界を確認し、自社と競合する企業に関わっていないかを聞いておきましょう。契約書では、契約期間中に競合企業の顧問や役員に就く場合は事前に知らせてもらう、あるいは承諾を必要とする、といった条項を設ける方法があります。

ただし、契約終了後まで長期間にわたって幅広い競業を禁じる条項は、顧問の仕事の自由を過度に制限するものとして、効力が争われることがあります。守りたい情報の範囲と期間を絞り、合理的な内容にとどめることが大切です。

契約期間・解約条件・報酬の見直し時期を決めておく

新規事業は状況の変化が激しいため、顧問契約も見直しやすい形にしておくのが得策です。

最初は3か月や6か月といった短めの期間で契約し、更新のたびに関与の範囲や報酬を見直す形にすると、事業の進み具合に合わせて柔軟に調整できます。

解約については、何日前までに申し出れば解約できるのか、途中解約の場合に報酬をどう精算するのかを決めておきましょう。

前述のとおり、委任契約は原則としていつでも解除できますが、不利な時期の解除には損害賠償の問題が生じることもあるため、契約書で解約の手順を明確にしておくと双方が安心できます。

あわせて、顧問が社外で「◯◯社の顧問」と名乗ってよいかどうか、名刺や会社のウェブサイトに名前を出すかどうかも決めておくとよいでしょう。

顧問の肩書きが取引先に誤解を与え、会社を代表する権限があるかのように受け取られることを防ぐためです。

個人の顧問と契約するならフリーランス法の義務も確認する

従業員を雇っていない個人の顧問に業務を委託する場合は、2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆるフリーランス法)にも注意が必要です。

この法律では、業務を委託する事業者は、委託した業務の内容、報酬の額、支払期日などを、書面またはメールなどの電磁的方法で直ちに明示しなければなりません。

また、従業員を雇っている会社が委託する場合、報酬の支払期日は、給付を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内で定める必要があります。

顧問契約書を交わしていれば取引条件の明示はおおむね満たせますが、支払期日の定め方は自社の支払いサイクルと照らし合わせて確認しておきましょう。
[参照元]特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 | e-Gov 法令検索

新規事業の推進に強い顧問の選び方と5つのポイント

顧問選びで失敗する原因の多くは、肩書きや経歴の華やかさだけで決めてしまうことです。

新規事業の顧問として本当に役立つかどうかは、自社の状況との相性で決まります。ここでは、候補者を見極めるときに確認したい5つのポイントを解説します。

自社と同じフェーズ・業界で実績があるかを確かめる

最初に確認したいのは、候補者の経験が自社の新規事業のフェーズと業界にどれだけ近いかです。

大企業で大規模な事業を率いた経験と、ゼロから事業を立ち上げた経験は、必要とされる判断がまったく違います。立ち上げ期の新規事業には、少ない資源で仮説を検証し、早く判断を下した経験を持つ人が向いています。

業界についても同様です。法人向けと個人向け、規制の多い業界と少ない業界では、顧客の獲得方法も事業の立ち上がり方も大きく異なります。

候補者の経歴を見るときは、役職名よりも「どの業界で、どのフェーズの事業に、どんな立場で関わったのか」を具体的に確認しましょう。

面談では、過去にうまくいかなかった事業の経験も聞いてみることをおすすめします。

失敗から何を学んだかを具体的に話せる人は、自社の新規事業がつまずいたときにも現実的な助言をしてくれる可能性が高いといえます。

助言だけでなく社内に知見を残してくれるかを見る

顧問との契約はいつか終わります。契約終了後も新規事業を続けていくためには、顧問の知見が社内に残ることが欠かせません。

良い顧問は、答えを教えるだけでなく、「なぜその判断になるのか」という考え方を社内の担当者に伝えようとします。判断の基準を言葉にしてくれる人、担当者に考えさせる問いを投げかけてくれる人であれば、契約期間中に社内の人材も育ちます。

逆に、すべてを自分で判断して結論だけを伝える顧問は、短期的には頼もしく見えても、契約が終わったときに社内に何も残らないおそれがあります。

面談の際に、過去の顧問先で社内の人材育成にどう関わったかを聞いてみると、その人の関わり方が見えてきます。

稼働時間と関与の深さが期待と合っているかを確認する

経験豊富な顧問ほど、複数の企業に関わっていることが多く、1社に割ける時間には限りがあります。契約後に「思ったより連絡がつかない」「定例以外は相談できない」と不満を抱くケースは珍しくありません。

面談では、現在いくつの企業に関わっているのか、自社のために月に何時間程度を確保できるのか、定例以外の相談にどのくらいの速さで応じられるのかを確認しましょう。

新規事業の立ち上げ期は判断を急ぐ場面が多いため、返信の速さや相談のしやすさは、経歴と同じくらい重要な要素です。

自社が期待する関与の深さも、事前に言葉にしておく必要があります。

壁打ちだけでよいのか、商談への同席まで期待するのかによって、ふさわしい人物も報酬も変わります。

人脈の中身を具体的に説明できるかを聞く

顧問に人脈を期待する場合は、その中身を具体的に確認することが欠かせません。

「大手企業の役員に知り合いが多い」といった説明だけでは、自社の事業に役立つかどうかを判断できません。

面談では、自社のターゲットとなる業界や企業を具体的に挙げ、どの程度のつながりがあるのか、過去にどのような紹介をして、どんな結果につながったのかを聞いてみましょう。

紹介先の名前まで出せない場合でも、業界や役職、つながりの深さを具体的に話せる人であれば、期待できる可能性は高まります。

また、紹介を受けた後の商談を進めるのは自社です。紹介してもらったものの社内の準備が整っておらず、せっかくの機会を活かせなかったというケースもあります。

人脈を活用する顧問を迎える場合は、紹介を受けた後の営業体制もあわせて整えておきましょう。

面談で使える確認質問を用意しておく

候補者との面談は、限られた時間で相手を見極める場です。事前に質問を用意しておくと、複数の候補者を同じ基準で比べやすくなります。次のような質問をそろえておくと役立ちます。

確認したいこと 質問の例
経験の近さ 当社と同じ業界やフェーズの事業に、どんな立場で関わりましたか
失敗からの学び うまくいかなかった事業で、何が原因だったと考えていますか
関与の仕方 当社のために月に何時間程度を確保できますか。定例以外の相談にはどう対応しますか
人脈の中身 当社のターゲット業界には、どの程度のつながりがありますか
知見の残し方 過去の顧問先で、社内の人材育成にどう関わりましたか
利益相反 現在、当社と競合する企業に関わっていませんか
初期の見立て 当社の計画を聞いて、最初に確かめるべきことは何だと考えますか

最後の質問は特に有効です。短い説明を聞いただけで、事業の弱点や最初に検証すべき点を的確に指摘できる人は、実際に顧問として関わってもらったときにも価値を発揮してくれる可能性が高いといえます。

新規事業の顧問を探す方法と導入までの流れを確認する

求める人物像が固まったら、次は実際に候補者を探す段階です。

顧問の探し方にはいくつかの方法があり、それぞれ向いている場面が異なります。ここでは代表的な探し方と、相談から稼働開始までの流れ、導入後の振り返り方を解説します。

顧問紹介サービス・マッチングサービスを使う

経営顧問や業界経験者を探す場合、最も一般的なのが顧問紹介サービスやマッチングサービスの利用です。

サービスには、担当者が自社の課題を聞き取って候補者を提案してくれる紹介型と、登録している顧問のプロフィールを自社で検索して直接声をかけるプラットフォーム型があります。

紹介型は、課題の整理から人選まで任せられるため、初めて顧問を迎える企業でも進めやすいのが利点です。

一方で、手数料が上乗せされることが多く、費用は高くなりがちです。プラットフォーム型は、費用を抑えやすい代わりに、候補者を見極める手間は自社で負うことになります。

どちらを選ぶ場合でも、1つのサービスに絞らず、2〜3のサービスで候補者を比べてみることをおすすめします。

サービスによって登録している人材の層が異なるため、複数を見ることで自社に合う人に出会える確率が上がります。

士業の専門家は専門の窓口や紹介を活用する

弁護士や税理士、弁理士などの専門家は、一般的な顧問紹介サービスよりも、士業向けの窓口や紹介を使うほうが探しやすい場合があります。

たとえば日本弁護士連合会と全国52の弁護士会は、中小企業向けに「ひまわりほっとダイヤル」という弁護士との面談予約サービスを提供しています。

全国共通の電話番号やオンラインの申込フォームから申し込むと、地域の弁護士会を通じて弁護士と面談の予約ができ、一部の地域を除いて初回30分の相談が無料です。相談分野には契約交渉や知的財産の活用、顧問弁護士に関する相談も含まれています。
[参照元]ひまわりほっとダイヤル 日弁連の中小企業向け弁護士予約サービス

事業計画や資金調達については、前の章で紹介した認定経営革新等支援機関の検索システムから、地域や支援内容で専門家を探す方法もあります。

また、すでに付き合いのある顧問税理士や取引銀行から、新規事業の分野に強い専門家を紹介してもらうのも有効です。

社外取締役として迎えるなら社外役員のマッチングサービスが向いている

新規事業を含めた経営全体の監督を担ってほしい場合や、上場準備の過程で法律や会計の専門家を役員に迎えたい場合は、顧問ではなく社外取締役・社外監査役として迎える方法があります。

この場合は、社外役員の紹介に特化したマッチングサービスを使うと、役員経験のある候補者に効率よく出会えます。

当サイト「EXE(エグゼ)」は、社外取締役・社外監査役の選任を支援するマッチングサービスです。

経験年数10年以上、兼務社数5社以下、女性の社外役員候補者を含む2,000名以上の登録者の中から、社外取締役・社外監査役の経験がある人材を紹介しています(2026年10月時点・公式サイト)。

弁護士や公認会計士などの資格を持つ候補者の紹介も相談できます。

社外取締役を置く意義や期待される役割については、社外取締役はなぜ必要なのか|設置義務が課される場合・期待される役割などを解説も参考にしてください。

取引先・金融機関・知人からの紹介も有力な手段になる

サービスを使わず、人のつながりから顧問を探す方法もあります。

取引先の経営者、取引銀行の担当者、業界団体の関係者、すでに付き合いのある士業の専門家などに相談すると、信頼できる人を紹介してもらえることがあります。

紹介による顧問探しの利点は、紹介者を通じて人柄や仕事ぶりをあらかじめ知れることです。

一方で、紹介者との関係を気にして、条件交渉や契約の見直し、契約の終了を言い出しにくくなる面もあります。

紹介であっても、業務範囲や報酬、契約期間は他の方法と同じように書面で取り決め、関係が曖昧にならないようにしておきましょう。

相談から契約・稼働開始までは5つのステップ

どの方法で探す場合でも、顧問の導入はおおむね次の5つのステップで進みます。

  1. 課題と期待する役割を整理する(任せたいこと、期間、予算、社内の担当者と決裁者を決める)
  2. 候補者を探して複数人と面談する(確認質問の表を使って同じ基準で比べる)
  3. 条件をすり合わせる(業務範囲、関与の頻度、報酬の型と金額、契約期間を決める)
  4. 契約書を取り交わす(秘密保持、知的財産の帰属、競業、解約条件を盛り込み、必要に応じて弁護士の確認を受ける)
  5. キックオフで目標と進め方を共有する(最初の3か月で何を達成したいかを顧問と社内の担当者・決裁者で確認する)

特に大切なのが1つ目のステップです。課題が曖昧なまま候補者を探し始めると、面談のたびに求める人物像が変わり、選考が長引きます。「顧問に何を任せたいか」を一文で書けるまで整理してから動き出しましょう。

導入から3か月を目安に効果を振り返る

顧問を迎えたあとは、3か月を一つの区切りとして効果を振り返る機会を設けましょう。振り返りでは、次のような点を確認します。

  • キックオフで決めた目標に対して、どこまで進んだか
  • 顧問の助言を受けて、実際に判断や行動が変わった場面はあったか
  • 関与の頻度や業務範囲は、事業の現状に合っているか
  • 社内の担当者に知見が残り始めているか

振り返りの結果、期待どおりの効果が出ていれば契約を続け、必要に応じて関与の範囲や報酬を見直します。

思うような効果が出ていない場合は、原因が顧問の側にあるのか、社内の受け入れ体制にあるのかを切り分けたうえで、契約内容の変更や終了を検討しましょう。

短い期間で区切った契約にしておけば、こうした判断もしやすくなります。

顧問を活かせない企業には共通する失敗パターン4つ

顧問を迎えたものの、期待した成果が出ずに契約を終えるケースは珍しくありません。

その原因は、顧問の能力不足よりも、企業側の迎え方や使い方にあることが多いものです。ここでは、顧問を活かせない企業に共通する4つの失敗パターンを紹介します。

顧問に新規事業を丸投げしてしまう

最も多いのが、経験豊富な顧問を迎えたことで安心し、新規事業そのものを顧問に任せきりにしてしまうパターンです。

顧問は原則として助言をする立場であり、事業を前に進める責任は自社にあります。社内の担当者が手を動かさず、顧問の指示を待つだけの状態では、月に数回の関与では事業は進みません。

顧問に期待するのは「判断の質を上げること」であり、「事業を代わりに動かすこと」ではないと社内で共有しておくことが大切です。

実務を担う人が足りないなら、顧問とは別に、業務委託や採用で実務の担い手を確保する必要があります。

決裁者が関わらず助言が社内で止まる

担当者だけが顧問と話し、その内容を上司や経営陣に説明し直す形になっていると、助言の意図が途中で薄まり、判断が先送りされがちです。

新規事業の担当者が顧問の意見に納得しても、決裁者が同じ温度感で受け止めていなければ、意思決定にはつながりません。

前の章でも触れたとおり、少なくとも月に1回は決裁者が顧問と直接話す場を設けましょう。

重要な判断が必要な局面では、顧問を交えた会議で結論まで出す運用にしておくと、助言が社内で止まることを防げます。

名誉職として迎えて期待値がずれる

著名な経営者や大企業の元役員を「名前を借りる」感覚で迎え、具体的な役割を決めないまま契約してしまうケースもあります。顧問の側も何を期待されているのかがわからず、定例に顔を出すだけの関わり方になってしまいます。

顧問の肩書きが取引先や投資家への信用につながる場面があるのは事実です。しかし新規事業の顧問として迎えるなら、肩書きの効果だけに頼らず、どの課題について、どんな頻度で、何を成果として関わってもらうのかを明確にしておきましょう。

顧問に依存して社内にノウハウが残らない

顧問の助言が的確なほど、社内がその判断に頼りきってしまうことがあります。

重要な判断をすべて顧問に委ねていると、契約が終わった瞬間に、社内に判断できる人がいない状態に陥ります。

これを防ぐには、顧問から結論だけを聞くのではなく、判断の理由や考え方を記録として残しておくことが有効です。

定例ミーティングの議事録に「何を判断したか」だけでなく「なぜそう判断したか」「検討して採用しなかった案は何か」を書き残しておくと、顧問の知見が社内の資産として蓄積されていきます。

よくある質問(FAQ)

新規事業の顧問とコンサルタントはどちらを選ぶべきですか?

事業の方向性について経験者の判断材料がほしい場合は顧問、市場調査や戦略立案といった作業と成果物をまとめて任せたい場合はコンサルタントが向いています。

顧問は経験と相談の時間に、コンサルタントは作業と成果物に対して報酬を払うのが一般的です。ただし名称だけでは中身を判断できないため、契約前に業務範囲と成果物を具体的に確認しましょう。

顧問料の相場はいくらくらいですか?

新規事業の顧問料について、国や業界団体がまとめた公的な統計はありません。

顧問紹介サービスを運営する会社が示す目安として、月1回の壁打ち中心で月5万〜10万円、月2〜4回の関与で月10万〜30万円、週1〜2日の実務参画で月30万〜80万円と説明しています。

実際の金額は経歴や業務範囲、関与の頻度で大きく変わるため、依頼したい内容を整理して見積もりを比べることが大切です。

顧問には週に何回くらい関わってもらうのが一般的ですか?

決まった基準はなく、事業のフェーズと依頼したい内容によって変わります。

構想や検証の段階では月1〜2回の定例と随時の相談で始め、立ち上げや営業の段階で関与を増やすといった形が考えられます。最初は短い期間で契約し、3か月ごとに関与の頻度を見直すと、実態に合った関わり方に調整しやすくなります。

顧問契約に契約書は必要ですか?

必要です。顧問契約は民法上の準委任契約として結ばれることが多く、報酬の定めがなければ報酬を請求できないなどのルールがあるため、報酬額や支払い時期を明記しておく必要があります。

また、従業員を雇っていない個人の顧問に業務を委託する場合は、フリーランス法により取引条件を書面やメールなどで明示する義務があります。

業務範囲、秘密保持、知的財産の帰属、競業、解約条件も契約書に盛り込みましょう。

顧問に社外取締役を兼ねてもらうことはできますか?

同じ人に顧問と社外取締役の両方を担ってもらうこと自体が一律に禁じられているわけではありません。

ただし、社外取締役は会社法上の役員であり、法律で定められた要件があります。また、上場会社では、会社から顧問料などの報酬を受けていることが社外取締役の独立性の判断に影響する場合もあります。

両方の立場を担ってもらうことを検討する場合は、事前に弁護士に確認しておくと安心です。

顧問料は経費として計上できますか?

事業のために必要な助言の対価として支払う顧問料は、一般に事業の費用として扱われます。

ただし、弁護士や税理士などの資格を持つ個人に報酬を支払う場合は、支払う側が源泉徴収を行う必要があります。

資格を持たない顧問への報酬についても、業務の内容によっては源泉徴収が必要になる場合があるため、具体的な処理は顧問税理士に確認しましょう。

中小企業でも顧問を入れる意味はありますか?

あります。中小企業は社内に新規事業の経験者がいないことが多く、外部の経験者の視点を取り入れる効果はむしろ大きいといえます。

予算が限られる場合は、よろず支援拠点などの公的な無料相談窓口や、スポット型の相談から始め、効果を確かめながら継続的な顧問契約に進む方法もあります。

まとめ|まずは「何を任せたいか」を明確に

新規事業の顧問は、経験と人脈をもとに経営者や事業責任者の判断を支える外部の助言者です。

コンサルタントや業務委託とは報酬の対象が異なり、社外取締役のような法的な権限や責任も持ちません。

また、法律や税務の具体的な判断は、弁護士や税理士にしか任せられない業務があるため、事業の段階に応じて専門家を組み合わせることが成功への近道になります。

費用には公的な相場がなく、関与の頻度と業務範囲で決まります。

契約では、業務範囲、秘密保持、知的財産の帰属、競業、解約条件を明記し、個人の顧問と契約する場合はフリーランス法の義務も確認しておきましょう。そして何より大切なのは、顧問の助言を受け止める社内の担当者と決裁者を用意し、知見を社内に残していくことです。

今日からできるアクションとして、次の3つから始めてみてください。

  1. 顧問に任せたい課題を一文で書き出し、事業がいまどのフェーズにあるかを確認する
  2. 課題別の早見表を見て、経営経験者・弁護士・税理士・弁理士・社外取締役のうち、どの専門家が必要かを決める
  3. 顧問とやり取りする社内の担当者と、助言を受けて判断する決裁者を決めておく

新規事業を含めた経営全体の監督を担う人材として、社外取締役や社外監査役の選任を検討している場合は、EXEの社外役員の選任相談をご利用ください。

また、

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