経営顧問とは?役割・報酬相場と社外取締役との違いを解説

2026.10.20 2026.10.20
経営顧問とは?役割・報酬相場と社外取締役との違いを解説

INTRODUCTION

「経営の相談相手がほしいけれど、経営顧問を置くべきなのか、社外取締役やコンサルタントに頼むべきなのか判断がつかない」。

こうした悩みを抱える経営者や管理部門の責任者は少なくありません。

経営顧問は、法律上の役職ではありません。そのため、何を頼めて、いくらかかり、どこまで責任を負ってくれるのかが見えにくいのが実情です。

この記事では、経営顧問の法的な立場と主な役割を整理したうえで、相談役・社外取締役・社外監査役・士業の顧問・経営コンサルタントとの違いを比較します。

さらに、報酬の目安と契約形態、自社に合う選び方、契約で失敗しないための注意点まで、判断に必要な情報を順番に解説します。

この記事の要点

  • 経営顧問は会社法上の役員ではなく、議決権も役員としての法的責任も持たない「社外の相談相手」
  • 報酬は関与の頻度と専門性で決まり、月額固定・時間単価・成果報酬の3つの形態がある
  • 助言で足りるなら経営顧問、監督やガバナンスの強化まで必要なら社外取締役・社外監査役が適している

経営顧問とは|会社法上の役員ではない社外の相談相手です

経営顧問とは、経営者や経営陣の求めに応じて、経営上の課題について助言や支援を行う人のことです。

肩書きに「顧問」と付くため役員の一種と思われがちですが、会社法に「顧問」という機関や役職は定められていません。

この章では、経営顧問の定義と法律上の位置づけ、種類、必要な資格の有無、上場企業での扱いを順に確認していきます。

経営顧問は「判断を助ける立場」で関わる

経営顧問は、経営戦略、財務、組織、営業などの経営課題について、経験や専門知識をもとに経営者へ助言する立場の人です。

多くの場合、会社と顧問契約(業務委託契約)を結び、月に数回の定例ミーティングや随時の相談を通じて関わります。

ポイントは、経営顧問が「決める人」ではなく「判断を助ける人」だということです。最終的な意思決定は、社長や取締役会が行います。経営顧問は、判断の材料となる視点や選択肢、過去の経験にもとづく見通しを示す役割を担います。

社内での扱いは会社によってさまざまです。取締役会や経営会議に陪席してもらう会社もあれば、社長と一対一の面談だけで関わってもらう会社もあります。

名刺に「経営顧問」と記載して対外的な信用づくりに協力してもらうケースもありますが、その場合も法的な権限が付与されるわけではありません。

会社法上の機関ではないため議決権も登記もない

会社法は、株式会社の役員を「取締役、会計参与及び監査役」と定め、これらは株主総会の決議で選任すると規定しています(会社法329条)。

経営顧問はここに含まれません。そのため、株主総会での選任は不要で、登記の対象にもならず、取締役会での議決権もありません。
[参照元]会社法 | e-Gov 法令検索

役員でない以上、経営顧問は、取締役や監査役が負う「任務を怠ったときの会社に対する損害賠償責任」(会社法423条)の対象にもなりません。経営顧問が負うのは、顧問契約で定めた範囲の責任です。

この性質は、会社にとってメリットにもデメリットにもなります。選任の手続きが軽く、必要なときにすぐ迎えられる点はメリットです。

一方で、経営の結果について法的な責任を負わない人の意見に、経営判断が引きずられるリスクもあります。顧問の役割と関与の範囲を契約で明確にしておくことが大切なのは、このためです。

内部顧問と外部顧問の2種類がある

経営顧問は、どこから招くかによって大きく2つに分かれます。

内部顧問は、退任した社長や役員など、自社の出身者が就くケースです。社内の事情や取引先との関係を深く理解しているため、引き継ぎや対外関係の維持に強みがあります。ただし、現経営陣が遠慮して自由に判断しにくくなるおそれもあります。

外部顧問は、他社で経営経験を積んだ人や、コンサルタント、金融機関の出身者など、社外から招くケースです。

社内のしがらみがない分、客観的な指摘を受けやすくなります。その反面、自社の事業や文化を理解してもらうまでに時間がかかる点には注意が必要です。

「経営顧問業」に必要な資格はない

経営顧問として活動するために、法律上必要な資格はありません。元経営者や元役員が、経験を活かして複数社の顧問を務めるケースも多く見られます。

経営の助言に関わる国家資格としては、中小企業診断士があります。中小企業診断士は、中小企業支援法第11条などにもとづいて経済産業大臣が登録する、経営コンサルタントとして唯一の国家資格です。顧問を選ぶ際、資格の有無は専門性を確かめる目安のひとつになります。
[参照元]中小企業診断士 | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

ただし、税務や法律の分野には、資格者だけが行える独占業務があります。

税理士でない者は税理士業務を行えず(税理士法52条)、弁護士でない者は報酬を得る目的で法律事務を扱うことを業とできません(弁護士法72条)。資格を持たない経営顧問に、税務申告の代理や契約紛争の交渉まで頼むことはできない点を押さえておきましょう。

上場企業は相談役・顧問の状況を開示している

上場企業の場合、顧問の扱いは透明性の観点からも注目されています。

経済産業省のCGSガイドライン(コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針)は、相談役・顧問の役割は各社さまざまで、一律に良い・悪いとはいえないとしています。

そのうえで、経営責任を負わない相談役・顧問が現役の経営陣に不当な影響力を及ぼすおそれや、外部から実態が見えにくい不透明さを指摘しています。
[参照元]コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)抜粋|名古屋証券取引所

これを受けて、東京証券取引所はコーポレート・ガバナンス報告書に「代表取締役社長等を退任した者の状況」という記載欄を設けました。

2018年1月1日以後に提出する報告書から利用できます。記載する場合は、元社長などが相談役・顧問に就いているときの氏名、業務内容、勤務形態・報酬の有無、任期などを記載することが考えられるとされています。
[参照元]コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領(2017年8月改訂版)|日本取引所グループ

非上場の中小企業にこの開示義務はありません。

ただ、顧問に何を期待し、いくら払っているのかを社内で説明できる状態にしておくことは、規模を問わず有効です。

経営顧問が担う主な役割は5つある

経営顧問に頼める内容は幅広いものの、実際の依頼はおおむね次の5つに集約されます。

自社がどの役割を求めているのかが明確になるほど、適任者を選びやすくなり、契約後の期待値のずれも防ぎやすくなります。

経営戦略・事業計画の壁打ち相手になる

もっとも多い依頼が、経営戦略や事業計画の「壁打ち」です。

社長は最終判断を一人で背負う立場のため、社内には本音で相談できる相手がいないことも珍しくありません。経営顧問は、計画の前提に無理がないか、見落としているリスクはないかを第三者の目で確かめます。

たとえば新規事業の立ち上げであれば、市場の見立てや撤退基準の置き方について、似た局面を経験した顧問から具体的な指摘を受けられます。

答えを教わるというより、社長自身の考えを整理し、判断の質を上げるための対話相手と捉えるとイメージしやすいでしょう。

財務・資金繰りや金融機関対応を助言する

資金繰りの管理や金融機関との交渉は、経営の根幹にかかわる領域です。金融機関や事業会社の財務部門の出身者を顧問に迎え、試算表や資金繰り表を毎月一緒に確認してもらう会社もあります。

融資を申し込む際の事業計画の見せ方や、返済条件の見直しに向けた準備など、金融機関側の目線を知る人の助言は実務に直結します。

ただし、税務申告の代理は税理士の独占業務なので、顧問税理士と役割を分担する必要があります。

組織づくりと幹部・後継者の育成を支える

会社が一定の規模を超えると、社長一人で全体を見ることは難しくなります。

経営顧問は、組織体制や評価制度の見直し、幹部候補の育成について助言する役割も担います。

幹部候補に経営会議の進め方や数字の読み方を指導してもらったり、後継者と定期的に面談してもらったりする活用法もあります。社長が直接伝えると角が立つ内容も、外部の顧問を介すと受け入れられやすくなる場面があります。

人脈を活かして販路開拓や提携を後押しする

大手企業の元役員や業界団体での経験が長い人は、取引先や提携先につながる人脈を持っていることがあります。

こうした顧問を通じて、新規取引先への紹介や、提携候補との面談の場を設けてもらうことも可能です。

ただし、人脈は使えば減っていく資源でもあります。紹介を前提に契約する場合は、何社程度の紹介を想定するのか、紹介後の商談は誰が担うのかを事前に決めておくと、期待外れを防げます。

事業承継・M&Aや有事の意思決定を支える

事業承継やM&A、不祥事や業績急変といった有事の局面は、経験の差が判断の質に表れやすい場面です。

社内に経験者がいない場合、同じ局面をくぐり抜けた顧問の助言は大きな支えになります。

ただし、M&Aの契約交渉や法的な紛争対応は弁護士、株価の算定や税務の検討は公認会計士・税理士の領域です。

経営顧問には全体の進め方や判断の軸についての助言を求め、専門手続きは各分野の専門家に任せる役割分担が現実的です。

経営顧問と似た役職・専門家との違いを比較する

経営顧問を検討するときに迷いやすいのが、相談役や社外取締役、士業の顧問、経営コンサルタントとの違いです。

いずれも「社外の知見で経営を支える」点は共通していますが、法的な立場や責任、得意な課題は大きく異なります。

まずは一覧表で全体像をつかみ、そのあと一つずつ違いを確認していきましょう。

立場 会社法上の地位 選任・契約の方法

取締役会での議決権

会社に対する責任 向いている課題
経営顧問 役員ではない 顧問契約(業務委託) なし 契約の範囲内 経営判断への継続的な助言
相談役・参与 役員ではない(社内の呼称) 社内規程にもとづく委嘱 なし 契約・規程の範囲内 引き継ぎや対外関係の維持
社外取締役 役員(取締役) 株主総会の決議 あり 役員としての任務懈怠責任 経営の監督とガバナンス強化
社外監査役 役員(監査役) 株主総会の決議 なし(監査する立場) 役員としての任務懈怠責任 取締役の職務執行の監査
顧問税理士・顧問弁護士 役員ではない 顧問契約 なし 契約と各士業法の範囲内 税務・法務の専門手続き
経営コンサルタント 役員ではない プロジェクト単位の契約が中心 なし 契約の範囲内 期間と成果物が明確な課題

[参照元]会社法 | e-Gov 法令検索

相談役・参与とは就任の経緯と役割が異なる

相談役や参与も、会社法に定めのない社内の呼称です。

そのため法的な位置づけは経営顧問と同じで、議決権や役員としての責任はありません。違いは、主に誰がどんな経緯で就くかにあります。

相談役は、退任した社長や会長が就く名誉職的なポストとして使われることが多い呼び方です。参与は、部長級以上の社員や専門職に与える役職名として使われることもあり、会社によって意味がまったく異なります。

CGSガイドラインが指摘するように、こうした役職の役割は各社でさまざまです。肩書きの名称よりも、契約や社内規程で何を担ってもらうのかを確認することが重要です。
[参照元]コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)抜粋|名古屋証券取引所

社外取締役との違いは「議決権と法的責任」にある

社外取締役は、会社法上の役員である取締役のうち、その会社や子会社で業務執行に関わったことがないなど、一定の独立性の要件を満たす人を指します(会社法2条15号)。

株主総会で選任され、取締役会で議決権を持ちます。任務を怠った場合は、会社に対して損害賠償責任を負います(会社法423条)。[参照元]会社法 | e-Gov 法令検索

経営顧問が社長の「相談相手」だとすれば、社外取締役は経営を外から「監督する人」です。社長の方針に対して、取締役会で反対票を投じることもあります。この緊張感こそが、株主や金融機関から見た経営の信頼性につながります。

なお、2021年3月1日に施行された改正会社法により、上場会社など一定の会社は社外取締役を置くことが義務付けられました(会社法327条の2)。

非上場の中小企業に設置義務はありませんが、IPOを目指す会社や、外部株主・金融機関への説明責任が増している会社では、任意で社外取締役を迎える動きもあります。

社外監査役との違いは「監査する立場」にある

社外監査役は、就任前10年間にその会社や子会社の取締役・使用人などでなかったことといった要件を満たす監査役です(会社法2条16号)。監査役は、取締役の職務の執行を監査し、監査報告を作成する役割を担います(会社法381条)。[参照元]会社法 | e-Gov 法令検索

経営顧問が経営陣と同じ方向を向いて助言するのに対し、社外監査役は経営陣の職務が法令や定款に沿っているかを独立した立場から確かめます。

役割の向きが逆だと考えると違いが理解しやすいでしょう。社外監査役は株主総会で選任される役員なので、任務を怠れば会社への損害賠償責任を負う点も経営顧問と異なります。

関連記事:社外取締役はなぜ必要なのか|設置義務が課される場合・期待される役割などを解説

顧問税理士・顧問弁護士は独占業務を担える点が異なる

顧問税理士や顧問弁護士は、経営顧問と同じく顧問契約で関わる外部の専門家です。

違いは、資格にもとづく独占業務を担える点にあります。税務申告の代理や税務書類の作成は税理士、契約交渉の代理や訴訟対応は弁護士でなければ業として行えません。

中小企業では、顧問税理士が月次決算の報告にあわせて経営相談にも乗っているケースがよくあります。

そのため、経営顧問を新たに探す前に、今の顧問税理士や顧問弁護士に相談の範囲を広げてもらえないか確認するのも一つの方法です。

反対に、事業戦略や組織づくりなど、税務・法務の枠を超えた相談が増えてきたら、経営顧問を別に置く意味が大きくなります。

経営コンサルタントとは関わる期間と範囲が異なる

経営コンサルタントも、経営課題の解決を外部から支援する点では経営顧問と重なります。

違いは関わり方にあります。コンサルタントは、業務改善や新規事業の立ち上げなど特定のテーマについて、期間と成果物を決めたプロジェクト単位で関わることが一般的です。

一方、経営顧問は、テーマを限定せずに継続的に関わり、そのときどきの経営判断を支えるのが基本です。

「3か月で営業プロセスを立て直したい」ならコンサルタント、「毎月の経営判断を相談できる相手がほしい」なら経営顧問と考えると、使い分けがはっきりします。

実際には、コンサルタントがプロジェクト終了後に顧問契約へ切り替えるケースも少なくありません。

取締役と顧問はどちらが上なのか

「取締役と顧問はどちらが上ですか」という質問はよく寄せられます。

結論からいうと、両者は上下関係で比べるものではありません。会社の意思決定に法的な権限を持つのは取締役で、顧問はその判断を助言で支える立場です。

社内の序列や処遇の面では、元社長が顧問に就いた場合などに、顧問を取締役より厚く遇している会社もあります。

しかし、どれだけ厚遇されていても、顧問には取締役会での議決権がなく、指示を出す法的な権限もありません。CGSガイドラインが元社長の顧問による「不当な影響力」を問題視しているのも、この権限と責任のずれが理由です。

顧問を置く場合は、助言はしても決定はしない立場であることを、社内にも本人にも明確にしておくことが大切です。
[参照元]コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)抜粋|名古屋証券取引所

経営顧問の報酬相場と契約形態を確認する

経営顧問の報酬は、法律や公的な基準で決まっているものではなく、顧問と会社の契約で自由に決まります。

そのため、ネット上の「相場」も記事によって数字がばらばらです。

この章では、公表されている調査データをもとに目安を示し、報酬に幅が出る理由と、費用を抑えたいときの公的な選択肢、支払時の税務上の注意点まで整理します。

月額固定型は月十数万円がひとつの目安になる

もっとも一般的なのが、毎月決まった額を支払う月額固定型です。

月に何回の定例ミーティングと、どの範囲の随時相談に応じるかをあらかじめ決めておき、その対価を月額で支払います。

経営顧問全体の報酬を網羅した公的統計は見当たりません。ただし、経営コンサルタントの国家資格者である中小企業診断士については、業界団体が顧問料の実態を調査しています。

日本中小企業診断士協会連合会が会員に実施したアンケート(調査時点2020年11月、回答1,892名)では、民間企業の仕事が中心の診断士の顧問料は月額平均約16.1万円でした。訪問は月平均4.8日、顧問先は平均8.4社です。公的機関の仕事が中心の診断士では、顧問料は月額平均約7.9万円、訪問は月平均2.1日でした。
[参照元]「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について(企業診断ニュース2021年5月)|日本中小企業診断士協会連合会

このデータから読み取れるのは、「月に4〜5日程度関わってもらう顧問契約なら、月十数万円がひとつの目安になる」ということです。

一方、大手企業の元役員や特定業界の第一人者といった人材の報酬については、公表された統計がありません。

人脈や知名度に価値がある顧問ほど個別交渉の色合いが強くなるため、提示額が妥当かどうかは、関与日数と期待する成果から逆算して判断するのが現実的です。

時間・日額単価型はスポットの相談に向いている

必要なときだけ相談したい場合は、1時間あたり、または1日あたりの単価で支払う方法もあります。スポットでの助言や、特定の会議への出席を依頼する場面に向いています。

先ほどの調査では、民間企業の仕事が中心の診断士の経営支援業務の報酬は、1日あたり平均11.25万円でした。最高額の平均は14.48万円です。公的機関の仕事が中心の診断士では、1日あたり平均3.75万円と、3倍近い差があります。
[参照元]「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について(企業診断ニュース2021年5月)|日本中小企業診断士協会連合会

興味深いのは、月額顧問料を訪問日数で割り戻すと、1日あたりの単価が下がる点です。同じ調査の数字で試算すると、民間中心の診断士の顧問料(月約16.1万円)を月4.8日で割った1日あたりの単価は約3.4万円です。

これは、スポット契約の平均日額(約11.3万円)の3分の1程度にあたります。継続的に相談したいテーマがあるなら、単発で依頼するよりも顧問契約にした方が、1回あたりの費用を抑えやすいといえます。

成果報酬型は成果を数字で測れる領域に向いている

成果報酬型は、売上の増加額や紹介した取引先との成約件数など、成果に応じて報酬を支払う形態です。

成果が出なければ支払いが少なくて済むため、会社にとってはリスクを抑えやすい方法に見えます。

向いているのは、営業顧問による取引先の紹介のように、成果を数字で測りやすい領域です。反対に、経営戦略の助言や組織づくりのように、成果が出るまで時間がかかり、顧問の貢献を切り分けにくい領域には向きません。

注意したいのは、成果の定義があいまいなまま契約してしまうケースです。

「売上が増えた」のが顧問のおかげなのか、市況のおかげなのかで揉める例は少なくありません。成果報酬を取り入れる場合は、月額固定と組み合わせたうえで、対象となる成果や計算方法、支払期限を契約書に明記しておきましょう。

報酬に幅が出る理由は3つある

同じ「経営顧問」でも、報酬には数倍の開きがあります。主な理由は3つあります。

  1. 1つ目は、関与の頻度と範囲です。月1回の面談だけの契約と、毎週の経営会議に出席して随時の電話相談にも応じる契約とでは、顧問が使う時間がまったく違います。
  2. 2つ目は、専門性と経歴です。上場準備や海外展開、M&Aなど、経験者が少ない領域の顧問ほど報酬は高くなります。先ほどの調査でも、民間企業の案件を中心に手がける診断士は、公的機関の案件が中心の診断士に比べ、顧問料が約2倍になっていました。
  3. 3つ目は、会社の規模と課題の重さです。従業員数や事業の数が増えるほど、顧問が把握すべき情報や論点も増えます。その分、報酬も上がる傾向があります。

報酬の高い・安いだけで判断せず、自社が求める関与の深さと、その顧問でなければ得られない知見が何かを基準に比べることが大切です。

公的支援なら無料〜低額で相談できる

費用をかけずにまず相談したい場合は、公的な支援機関を活用する方法があります。

国は、中小企業や小規模事業者の経営相談窓口として、各都道府県に「よろず支援拠点」を設置しています。経営上のさまざまな相談に、何度でも無料で応じてもらえます。
[参照元]よろず支援拠点全国本部

また、中小企業基盤整備機構(中小機構)の各地域本部では、経営課題の解決に取り組む中小企業に専門家を派遣する「ハンズオン支援」を行っています。たとえばITを活用した経営課題を扱う「ハンズオン支援事業(IT)」の企画・導入コースでは、費用は1人日17,500円、標準の支援期間は10か月・20回程度とされています。
[参照元]中小企業施策利用ガイドブック(2025年度版)相談・情報提供|中小企業庁

公的支援は、特定の顧問が長く伴走する民間の顧問契約とは性質が異なります。

まずは公的窓口で課題を整理し、継続的な伴走が必要だとわかった段階で民間の顧問を探す、という順番もおすすめです。

顧問が個人なら源泉徴収の要否を確認する

顧問料を支払う際に見落としやすいのが、源泉徴収です。

弁護士や税理士など特定の資格を持つ個人に報酬を支払う場合、会社は所得税と復興特別所得税を源泉徴収して納付しなければなりません。国税庁の解説(2026年4月1日現在の法令等)では、税額は支払金額が100万円以下の部分について10.21%とされています。
[参照元]No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金|国税庁

また、謝礼や日当といった名目で支払っていても、実態が報酬であれば源泉徴収の対象になります。
[参照元]No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

資格を持たない個人の顧問の場合は、業務の内容によって源泉徴収の要否が分かれます。

顧問が法人であれば、原則として源泉徴収は必要ありません。契約前に顧問の立場(個人か法人か、資格の有無)を確認し、判断に迷うときは顧問税理士に相談しておくと安心です。

経営顧問を置くメリットとデメリットを押さえる

経営顧問は、うまく活用すれば少ない固定費で経営の質を高められる存在です。

一方で、役割の設計を誤ると、費用だけがかかって成果が見えない状態にもなりがちです。導入を判断する前に、メリットとデメリットの両方を確認しておきましょう。

メリット1:社内にない客観的な視点が入る

社内の議論は、どうしても過去の成功体験や社内の力関係に引っ張られます。社外の経営顧問は、そうしたしがらみがない立場から「その前提は本当に正しいのか」と問いかけられます。

特に、社長が創業者で社内に意見しにくい雰囲気がある会社では、顧問の存在が議論の質を大きく変えることがあります。

社長自身にとっても、反対意見を安心してぶつけてもらえる相手がいることは、判断ミスを防ぐ保険になります。

メリット2:専門知見と人脈を必要な分だけ使える

上場準備、海外進出、事業承継といった課題は、会社にとって数年に一度しか訪れません。

そのために専門人材を正社員として抱えるのは、費用の面でも、入社後の役割の面でも現実的ではありません。

経営顧問であれば、必要な期間だけ、必要な頻度で専門知見を取り入れられます。課題が片付けば契約を終える、あるいは別の分野の顧問に切り替えるといった柔軟な使い方ができる点も強みです。

メリット3:採用より早く、固定費を抑えて経験者を迎えられる

経営幹部クラスの人材を正社員として採用するには、時間がかかります。

給与に加えて社会保険料などの負担も生じ、ミスマッチだったときに簡単には契約を見直せません。

顧問契約は業務委託のため、条件が合えば比較的早く関与を始められ、契約期間の満了で見直すこともできます。

まず顧問として関わってもらい、相性や実力を確かめたうえで、役員や正社員としての就任を打診するという段階的な進め方も可能です。

デメリット1:成果が見えにくく費用対効果を測りにくい

経営顧問の価値は「判断の質が上がった」「失敗を避けられた」といった形で表れることが多く、数字で示しにくいのが難点です。

その結果、毎月の顧問料を払い続けているものの、何に役立っているのか社内で説明できない状態に陥ることがあります。

これを防ぐには、契約時に「半年後にどんな状態になっていたいか」を具体的に決め、定期的に振り返ることが欠かせません。振り返りの方法は、後の章の契約の注意点で詳しく解説します。

デメリット2:社内の反発や顧問への依存が起きやすい

社長が顧問の意見ばかりを重視すると、現場の社員や幹部は「自分たちの意見は聞いてもらえない」と感じます。外部の人間が経営方針に口を出すことに、反発が生まれることもあります。

反対に、顧問に頼りすぎて、社内で考える力が育たなくなるリスクもあります。

顧問を置く目的と役割を社内に共有したうえで、最終的に決めるのは経営陣であることを明確にしておくことが大切です。

デメリット3:権限がないため実行力には限界がある

経営顧問には、社員に指示を出す権限も、取締役会で議決に加わる権限もありません。

どれほど的確な助言でも、社内で実行する人がいなければ成果にはつながりません。

課題の中身が「何をすべきかわからない」ではなく「わかっているが手が回らない」である場合、必要なのは助言者ではなく実行する人です。この見極めについては、次の章で詳しく整理します。

経営顧問・社外役員・採用のどれを選ぶべきか

「外部の力を借りたい」と考えたとき、経営顧問は選択肢のひとつにすぎません。

課題の種類によっては、社外取締役や社外監査役、士業の顧問、正社員の採用、プロジェクト型のコンサルタントの方が適していることもあります。

下の表で、自社の課題がどれに当てはまるかを確認してみてください。

いま一番困っていること 適した選択肢 判断のポイント
経営判断を相談できる相手がいない 経営顧問 決めるのは社長のまま、判断の質を上げたい
株主・金融機関・上場審査に向けて経営の監督体制を整えたい 社外取締役・社外監査役 議決権や監査権限を持つ独立した役員が必要
税務申告や契約書、労務手続きに不安がある 顧問税理士・顧問弁護士・社労士 資格者の独占業務にあたるか
やるべきことはわかっているが、実務を回す人がいない 管理部門人材の採用 助言ではなく、社内で手を動かす人が必要
期限の決まった特定テーマを短期間で解決したい プロジェクト型のコンサルタント 期間と成果物を明確に区切れるか

経営判断への助言がほしいなら経営顧問が合う

経営顧問が向いているのは、社長が意思決定の主導権を持ったまま、判断の質を高めたい場面です。

新規事業に進むか、どの市場を優先するか、幹部の配置をどうするかといった、正解のない判断を一緒に考えてくれる相手を求めているなら、経営顧問が第一の選択肢になります。

顧問には議決権も役員としての責任もないため、社長の判断を縛ることはありません。

その分、関与の仕方を柔軟に設計できます。月1回の壁打ちから始めて、必要に応じて関与を深めていくとよいでしょう。

監督やガバナンス強化が目的なら社外取締役・社外監査役が合う

株式の上場を目指している、外部から出資を受けた、金融機関から経営体制の強化を求められている。

こうした場面で必要になるのは、助言者ではなく、経営を外から監督する役員です。社外取締役は取締役会の議決に加わり、社外監査役は取締役の職務執行を監査します。

いずれも株主総会で選任され、役員として法的な責任を負います。その独立した立場と責任が、株主や金融機関に対する信頼の裏付けになります。
[参照元]会社法 | e-Gov 法令検索

経営顧問を置いても、こうした監督機能は代わりになりません。ガバナンス強化が目的なら、最初から社外役員の選任を検討する方が近道です。

社外取締役・社外監査役の候補を探す方法のひとつに、社外役員のマッチングサービス「EXE[エグゼ]」(運営:株式会社アシロ)があります。

EXEは、社外取締役・社外監査役の経験を持つ人材に絞って紹介しているのが特徴です。経験年数10年以上、兼務社数5社以下という条件を満たし、女性の社外役員候補も含む2,000名以上の登録者からマッチングを行います。

弁護士や公認会計士の社外役員を探したい場合や、IPO準備に向けた人材紹介にも対応しています。なお、EXEが紹介するのは社外取締役・監査役であり、経営顧問の紹介は行っていません。
[参照元]EXE[エグゼ]の社外役員登録者数が2,000名を突破!|EXE[エグゼ]

社外役員の候補者の紹介や選任の進め方については、EXE[エグゼ]の無料選任相談から問い合わせできます。

税務・法務の個別論点なら士業の顧問で足りる

相談の中身が、税務申告、契約書のチェック、労務トラブルの予防といった個別の専門分野に集中しているなら、経営顧問よりも士業の顧問が適しています。

税理士業務や法律事務には資格者の独占業務が含まれるため、資格を持たない経営顧問には任せられない部分があるからです。

すでに顧問税理士や顧問弁護士がいる場合は、まず相談の範囲を広げられないか確認してみましょう。

士業の顧問が経営全般の相談にも対応しているなら、新たに経営顧問を置く必要はないかもしれません。

実務を回す人手が足りないなら管理部門人材の採用を検討する

  • 「資金繰り表を毎月作る人がいない」
  • 「契約書の管理が追いつかない」
  • 「経営企画の機能が社長一人に集中している」

こうした悩みの根本は、助言の不足ではなく、社内で実務を担う人の不足です。

経営顧問に相談しても、最終的に手を動かす人がいなければ状況は変わりません。

この場合は、経理・財務、法務、経営企画などの管理部門人材を社員として採用する方が、課題の解決に直結します。経営顧問に採用要件の整理を手伝ってもらいながら、実務を担う人材を採用するという組み合わせも有効です。

管理部門や士業の人材を採用したい場合は、管理部門と士業の採用支援に特化した人材紹介サービス「BEET-AGENT」(運営:株式会社アシロ)も選択肢になります。

法務、弁護士、経理財務、公認会計士、税理士、人事労務、経営企画、内部監査などの職種に対応しており、担当者クラスからリーダー・管理職クラスまで相談できます。紹介した人材が早期に退職した場合には、在籍期間に応じて紹介手数料を返金する制度も設けています。

採用の相談はBEET-AGENTの企業向けページから問い合わせできます。

期間限定の課題ならプロジェクト型のコンサルが向いている

「半年で新しい人事評価制度をつくる」「3か月で業務フローを見直してコストを1割下げる」。このように、テーマと期限、成果物がはっきりしている課題には、プロジェクト型のコンサルタントが向いています。

コンサルタントは、決められた期間にチームで集中的に関わり、分析や制度設計、資料作成まで担うことが一般的です。経営顧問のように継続的な相談相手になるのではなく、課題を解決したら契約が終わる関係です。

プロジェクトの終了後、定着支援のために同じコンサルタントと顧問契約を結ぶという流れも、よく見られる組み合わせです。

経営顧問の探し方は5つある

経営顧問は、求人サイトに募集を出せばすぐ見つかるというものではありません。

どこで探すかによって、出会える人材の層も、かかる費用も変わります。まずは5つの探し方の特徴を一覧で確認し、そのあと一つずつ詳しく見ていきましょう。

探し方 費用の傾向 出会いやすい人材 向いているケース
顧問紹介サービス 顧問料に加えて紹介料・仲介手数料がかかる 大手企業の元役員、特定分野の専門家 候補者を比較して選びたい
金融機関・士業からの紹介 紹介自体は無料のことが多い 地域の専門家、財務に強い人材 自社の財務事情を踏まえて選びたい
公的機関への相談 相談は無料〜低額 中小企業診断士などの専門家 まず課題を整理したい、費用を抑えたい
知人・経営者仲間からの紹介 紹介自体は無料 人柄や実績を知っている人材 信頼できる相手を早く見つけたい
退任役員・OBへの依頼 社内で条件を決めやすい 自社の事情を熟知した人材 引き継ぎや対外関係を維持したい

顧問紹介サービスで候補者を提案してもらう

1つ目は、顧問紹介サービスを利用する方法です。企業の元役員や専門家を登録人材として抱えるサービスに課題を伝えると、条件に合う候補者を提案してもらえます。

候補者の経歴や得意分野が整理されているため、複数の人材を比較しながら選べるのが強みです。

面談の日程調整や条件交渉を代行してもらえるサービスもあります。一方で、顧問料とは別に紹介料や仲介手数料がかかることが一般的です。

契約前に、費用の総額と、顧問と直接契約するのか、サービスを介して契約するのかを確認しておきましょう。

取引先の金融機関や顧問の士業から紹介を受ける

2つ目は、取引先の銀行や信用金庫、顧問税理士などから紹介を受ける方法です。

金融機関や士業は、地域の専門家や経営者のネットワークを持っていることが多く、自社の財務状況を理解したうえで適任者を紹介してくれる可能性があります。

中小企業診断士へのアンケートでは、コンサルティングを依頼されたきっかけの1位に「金融機関からの紹介」を挙げた人が7.1%いました。ウェブサイトなどを通じた企業からの直接依頼(6.8%)を上回っています。
[参照元]「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について(企業診断ニュース2021年5月)|日本中小企業診断士協会連合会

日頃から付き合いのある金融機関の担当者に「こういう課題について相談できる専門家を探している」と伝えておくだけでも、候補が見つかることがあります。

よろず支援拠点や商工会議所などの公的機関に相談する

3つ目は、公的な支援機関を通じて探す方法です。各都道府県に設置されたよろず支援拠点は、経営上のさまざまな相談に何度でも無料で応じています。商工会議所や商工会でも、専門家の紹介や派遣を行っている場合があります。
[参照元]よろず支援拠点全国本部

実際、先ほどの中小企業診断士へのアンケートで、依頼を受けたきっかけの1位として最も多く挙げられたのは「中小企業支援機関・商工団体等からの紹介」で、24.8%でした。経験のある専門家の多くは、こうした機関の紹介を通じて企業と出会っています。経営者の側から見れば、支援機関に相談することが、実績のある専門家への近道になるということです。
[参照元]「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について(企業診断ニュース2021年5月)|日本中小企業診断士協会連合会

公的機関では、まず無料で課題を整理し、継続的な伴走が必要だとわかった段階で民間の顧問契約に切り替える、という使い方もできます。

知人や経営者仲間から紹介を受ける

4つ目は、知人や経営者仲間から紹介を受ける方法です。実際にその顧問と付き合いのある経営者から、人柄や仕事ぶりを事前に聞いたうえで依頼できるのが強みです。

同じアンケートでも、依頼のきっかけの1位に「現在や過去の顧問先企業からの紹介」を挙げた診断士が8.3%いました。顧問先からの評判が次の仕事につながっていることがうかがえます。

ただし、知り合いの紹介だと遠慮が生まれ、報酬や業務範囲をあいまいにしたまま始めてしまいがちです。

合わなかったときに断りにくいという難しさもあります。紹介経路にかかわらず契約書は必ず交わし、条件は書面で確認しましょう。

退任した役員やOBに内部顧問を依頼する

5つ目は、退任した社長や役員、自社のOBに、内部顧問として残ってもらう方法です。

社内の事情や取引先との関係を熟知しているため、事業承継の引き継ぎや主要取引先との関係維持に力を発揮します。

一方で、元社長が顧問に残ると、現経営陣が遠慮して自由に判断しにくくなるおそれがあります。CGSガイドラインも、経営責任を負わない相談役・顧問が現役の経営陣に不当な影響力を及ぼすおそれを指摘しています。
[参照元]コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)抜粋|名古屋証券取引所

内部顧問を置く場合は、任期と役割を最初に区切り、経営判断の権限は現経営陣にあることを社内外に明確にしておくことが大切です。

経営顧問は5つの基準で選ぶ

候補者が見つかったら、次は誰に依頼するかを見極める段階です。

経営顧問は長く付き合う相手になるため、肩書きや知名度だけで決めると、契約後に「思っていたのと違う」と感じることになりかねません。

ここでは、候補者を比べるときに確認したい5つの基準を紹介します。

自社の課題と同じ領域の実績があるか確かめる

経営顧問を選ぶうえで最も重要なのは、自社が抱える課題と同じ領域で実績があるかどうかです。

「大企業の元役員」という肩書きが立派でも、中小企業の資金繰りや少人数での組織運営を経験していなければ、助言が自社の実情に合わないことがあります。

候補者には、過去にどんな規模の会社で、どんな課題に、どう関わり、どんな結果になったのかを具体的に聞きましょう。

成功事例だけでなく、うまくいかなかった案件から何を学んだのかを率直に話せる人は、自社の状況にも誠実に向き合ってくれる可能性が高いといえます。

関与の頻度と範囲を具体的に約束できるか確かめる

前の章で紹介した調査では、民間企業の案件を中心に手がける診断士の顧問先は平均8.4社でした。

人気のある顧問ほど多くの会社を掛け持ちしているため、契約したものの「なかなか時間を取ってもらえない」という事態が起こりがちです。
[参照元]「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果について(企業診断ニュース2021年5月)|日本中小企業診断士協会連合会

候補者には、月に何回、何時間関われるのか、急ぎの相談にはどの程度の時間で返答できるのかを確認しておきましょう。

あわせて、出席してほしい会議や、見てほしい資料の範囲も具体的に伝えておくと、契約後のすれ違いを防げます。

取引先との利益相反がないか確かめる

経営顧問は、複数の会社と同時に契約していることが少なくありません。

顧問先の中に自社の競合企業や主要な取引先が含まれていると、機密情報の扱いや助言の中立性に問題が生じるおそれがあります。

候補者には、競合や取引先と現在または過去に関係があるかを事前に確認しましょう。そのうえで、利益相反が生じた場合の報告義務を契約書に盛り込んでおくと安心です。

短期契約やスポット相談で相性を試す

経歴や実績が申し分なくても、実際に話してみると相性が合わないことはあります。経営顧問の価値は、社長が本音で相談でき、顧問が耳の痛い指摘も率直にできる関係があってこそ生まれます。能力と同じくらい、相性も大切な選考基準です。

いきなり1年契約を結ぶのではなく、まずは数回のスポット相談や、3か月程度の短期契約から始めてみるのがおすすめです。

実際の相談を通じて、こちらの話をどれだけ丁寧に聞いてくれるか、社内の幹部や社員とも協力して進められそうかを確かめられます。相性に問題がなければ、そのうえで契約期間を延ばせば十分です。

初回面談ではこの7つを質問する

初回の面談では、次のような質問を通じて、ここまでの基準を満たしているかを確かめておくとよいでしょう。

  1. 当社と近い規模・業種の会社で、どんな課題を支援しましたか
  2. その支援で、うまくいかなかったことと、そこから得た教訓は何ですか
  3. 月に何回、どのような形で関わることを想定していますか
  4. 急ぎの相談には、どのくらいの時間で対応できますか
  5. 現在、当社の競合や取引先と関係はありますか
  6. 3か月後・半年後に、当社がどんな状態になっていれば成功だと考えますか
  7. 報酬の形態と、契約期間・解約の条件はどうなっていますか

複数の候補者に同じ質問をすると、答えの具体性や考え方の違いが比べやすくなります。

面談後は、回答の内容だけでなく、面談中の受け答えの印象もメモに残しておくと、最終判断の材料になります。

経営顧問契約では5つの点に注意する

経営顧問とのトラブルの多くは、契約時に「何を、どこまで、いくらで頼むのか」を決めきれていないことから生まれます。

口約束で始めてしまうと、期待と実際の関与が食い違ったときに解決の手がかりがありません。契約書を作る際に押さえておきたいポイントを確認していきましょう。

業務範囲と成果物を契約書に明記する

契約書には、顧問に依頼する業務の範囲をできるだけ具体的に書き込みましょう。

「経営全般に関する助言」とだけ書くと、資料の作成や取引先への同行まで含むのかどうかで、のちに解釈が分かれます。

定例ミーティングの回数と時間、随時相談の受付方法、会議への出席の有無、報告書などの成果物を作るかどうかを明記しておくのがおすすめです。

あわせて、契約外の業務を頼む場合は別途見積もりとする旨も入れておくと、追加費用をめぐる行き違いを防げます。

契約期間・中途解約・更新の条件を決めておく

契約期間は、6か月から1年程度で区切り、更新の際に見直す形にしておくのが一般的です。

最初から長期の契約を結ぶと、期待した効果が出なかった場合に見直しのタイミングを失ってしまいます。

あわせて、中途解約の条件も決めておきましょう。何か月前までに申し出れば解約できるのか、前払いした顧問料をどう精算するのかを定めておけば、関係を円満に終えられます。

自動更新とする場合は、更新を拒否する際の通知期限も明記しておくと安心です。

守秘義務と競業避止の範囲を定める

経営顧問には、財務状況、取引条件、人事情報、新規事業の計画など、社外秘の情報を共有することになります。

契約書には、守秘義務の対象となる情報の範囲と、契約終了後も守秘義務が続く期間を明記しましょう。

また、顧問が自社の競合企業とも契約するのを制限したい場合は、競業避止の範囲(対象となる業種や地域、期間)を定めておく必要があります。

ただし、範囲を広げすぎると顧問の活動を過度に縛り、引き受けてもらえない原因にもなります。本当に守りたい情報や事業に絞って設定するのが現実的です。

報酬・経費・支払方法を明確にする

報酬の額と形態(月額固定、時間単価、成果報酬)に加えて、交通費や宿泊費などの経費を誰が負担するのかも決めておきましょう。

遠方の顧問の場合、経費の扱いだけで毎月の支払額が大きく変わることがあります。

成果報酬を組み合わせる場合は、何をもって成果とするのか、どの期間の成果を対象にするのか、いつ支払うのかを具体的に定めます。

顧問が個人の場合は、前の章で解説した源泉徴収の要否も契約前に確認しておきましょう。

3か月ごとに効果を振り返る場を設ける

経営顧問の効果は目に見えにくいため、定期的に振り返る仕組みをあらかじめ組み込んでおくことが大切です。

おすすめは、3か月ごとに社長と顧問が契約当初の目標を見直し、進み具合を確認する場を設けることです。

振り返りでは、「顧問の助言で判断を変えたこと」「顧問の紹介で生まれた商談」「顧問がいなければ見落としていたリスク」などを具体的に書き出してみましょう。

挙げられるものが少なければ、関与の仕方を変えるか、契約を見直すサインです。顧問の側にとっても、期待されている役割を確かめる機会になります。

よくある質問

経営顧問の報酬はいくらですか?

契約で自由に決まるため、決まった相場はありません。目安としては、日本中小企業診断士協会連合会のアンケート(調査時点2020年11月)で、民間企業の仕事が中心の中小企業診断士の顧問料が月額平均約16.1万円、訪問が月平均4.8日でした。

大手企業の元役員など特別な経歴を持つ顧問の報酬を示す公的統計はないため、関与日数と期待する成果から逆算して判断しましょう。

取締役と顧問はどちらが上ですか?

上下関係で比べるものではありません。取締役は会社法上の役員として取締役会の議決権と法的責任を持ちますが、顧問は役員ではなく、議決権も指示を出す法的権限もありません。

社内の処遇で顧問を厚遇する会社はありますが、会社の意思決定の権限を持つのは取締役です。

経営顧問になるのに資格は必要ですか?

法律上、必要な資格はありません。元経営者や元役員が経験を活かして顧問を務めるケースも多くあります。

経営の助言に関わる国家資格には中小企業診断士があります。ただし、税務申告の代理は税理士、報酬を得て法律事務を扱うことは弁護士の独占業務のため、資格を持たない顧問には任せられません。

経営顧問は英語で何といいますか?

一般的には「Management Advisor」や「Business Advisor」と表現します。

退任した経営者が顧問に就く場合は「Senior Advisor」が使われることもあります。海外向けの名刺や資料で使う場合は、肩書きだけで役割が伝わりにくいため、助言の範囲を補足して説明するのがおすすめです。

顧問料は経費にできますか?

業務委託として、実態に見合った顧問料を支払っている場合は、通常は会社の経費(損金)として扱えます。

注意したいのは、顧問が社内での地位や職務からみて実質的に経営に従事している場合です。

この場合、税法上は「役員」とみなされることがあります。国税庁は、相談役や顧問なども、実質的に法人の経営に従事していると認められる者は役員に含まれるとしています。
[参照元]No.5200 役員の範囲|国税庁

役員とみなされると、顧問料は役員給与として扱われます。その場合、定期同額給与などの要件を満たさない部分は損金に算入できません。
[参照元]No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁

元社長が顧問として経営に深く関わる場合などは、顧問税理士に確認しておきましょう。

社外取締役に顧問を兼ねてもらうことはできますか?

会社法上、社外取締役が別途コンサルティング契約を結ぶこと自体は禁止されていません。

ただし、上場会社が独立役員として届け出る場合は注意が必要です。日本取引所グループは、会社から役員報酬以外に「多額の金銭その他の財産」を得ているコンサルタントや法律専門家などを、独立性の判断で留意すべき対象に挙げています。

また、「顧問」や「相談役」は法令上の定義がないため、実態に照らして業務執行者や使用人にあたるかを判断する必要があるとしています。
[参照元]独立役員の確保に係る実務上の留意事項(2026年7月改訂版)|日本取引所グループ

監督する立場の社外取締役と、助言する立場の顧問は役割が異なるため、兼務させる前に弁護士など専門家に確認するのが安全です。

中小企業でも社外取締役を置けますか?

置けます。会社法上の社外取締役の要件を満たせば、会社の規模や上場の有無にかかわらず選任できます。

社外取締役の設置が法律で義務付けられているのは上場会社など一定の会社に限られますが、非上場の中小企業でも、IPOの準備や外部株主・金融機関への説明責任の強化を目的に、任意で選任するケースがあります。
[参照元]会社法 | e-Gov 法令検索

まとめ

経営顧問は、会社法上の役員ではなく、議決権も役員としての責任も持たない「社外の相談相手」です。

報酬は契約で自由に決まります。中小企業診断士の調査では、民間企業の仕事が中心の診断士の顧問料は月額平均約16.1万円でした。必要な期間だけ専門知見や人脈を取り入れられる一方、権限がないため、実行する人がいなければ成果にはつながりません。

外部の力を借りる前に大切なのは、自社がいま何を必要としているのかを見極めることです。判断の質を高める助言がほしいなら経営顧問、経営の監督やガバナンスの強化が目的なら社外取締役・社外監査役が適しています。

税務・法務の個別論点なら士業の顧問、実務を回す人手が足りないなら管理部門人材の採用が近道です。

まずは、次の3つから始めてみてください。

  1. 社外の人に相談したい課題を3つ書き出す
  2. この記事の判断表で、必要なのが「助言」「監督」「実務」のどれかを確認する
  3. よろず支援拠点や取引先の金融機関、紹介サービスに相談し、候補者と面談する

ガバナンス強化のために社外取締役・社外監査役を検討している場合は、EXE[エグゼ]の無料選任相談から問い合わせできます。

管理部門の実務を担う人材を採用したい場合は、BEET-AGENTの企業向けページから問い合わせできます。

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